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66:原点回帰:再びパルメニデスへ

第66話
測定・観測は一回だけ

前回、次を述べた。
言語的解釈(=言語的コペンハーゲン解釈)


言語的解釈は、

  • 下図(=デカルト図式)を想定して、
    量子力学の言葉(測定理論)で、世界を記述せよ

である。


ただし、
⓪見ていないことを、見たように言うな
①:相互作用(ⓐとⓑ)を陽には言わない。 つまり、観客は舞台に上がってはならない  第50話「オカルト」参照
②:測定は一回だけ(第15話「飛ぶ矢」参照
③:測定者には、「時空」は無い(第67話「時制」参照


となる.

さて、2500年ほど遡って、パルメニデスを思い出そう。プラトンが畏敬していた人物で、その主張は独創的かつ健全である。
  • パルメニデスは理性や論理を重視し、感覚的にはありえないことでも、理性的に説明がつくことならばそれを真理とする。

とパルメニデスは主張した。
これから相対性理論を連想するのは、すこし短絡すぎると思う。 相対性理論も感覚的にはありえないという部分はあるにしても、慣れてくれば、自然と思えてくるからである。 
しかし、
  • 言語的解釈⓪-③はどんなに慣れても感覚的にはありえない

と思う。


ここでは、
  •  ②:測定は一回だけ
を議論する。

パルメニデス

さて、 パルメニデスは次の「不変性」を主張した。
(a):変化・運動はない。
(b):「一」だけある。増えたり減ったりしない。 よって、「多」はない

言語的解釈②からは、これは当然のことである。 なぜならば、
(a):「②:測定は一回だけ」なのだから、継続的な測定は不可能で、したがって、
  • 変化・運動を見たとしたら、それは錯覚である

(b):「②:測定は一回だけ」なのだから、二つの測定対象を見ることはできない。 したがって、
  • 「一」だけで、「多」はない

以上となる。
もちろん、「運動・変化」や「多」を測定理論で記述できる。そうでなくては、測定理論で科学を記述することなどできるわけがない。 ただその記述が「感覚的にはあり得ないような記述」をするだけである。パルメニデスだって、そういうことを言っていたのだと思う。

また、次は普通ではないかもしれないが、
  • 測定による波束の収縮はない
とする。 「波束は一つだけ」なのだから、二つの波束(測定前の波束と測定後の波束)などあり得ないからである。





もうすこし正確な言い方もしておこう。 一回だけできる測定を使い切ってしまったので、もし波束の収縮があったとしても、それを確かめる測定はもうできないからである。 バークリーの
  • 存在するとは、知覚されること

なのだから、波束の収縮が存在しては困る。
しかしながら、あたかも「波束の収縮」があるような測定の仕方を工夫することが出来る。 詳しくは、次を見よ:


波束の収縮はない
通常のコパンハーゲン解釈は次を主張する
  • 測定値を得るとその測定値を(=固有値)に対応する固有ベクトルに波束が収縮する

しかし、言語的解釈は、「波束の収縮はない」と主張するので、混乱するかもしれない。
よって、以下に多少の補足をしておこう

(A):波束の収縮があると困ること:
「測定した瞬間(=測定値を得た瞬間)」という概念が定義できないと考える。 フォン・ノイマンは「抽象的自我」なる概念を持ちだして、「抽象的自我が感知した瞬間」を「測定した瞬間」としたが、ますます混乱してしまった。

(B):波束の収縮があると困ること:
さて、冗談として:
  • 波束の収縮を起こす能力は、ホモサピエンス特有の能力である

と言われることもあるが、もしそうだとしたら、「②:相互作用(ⓐとⓑ)」を認めたことと等しくなってしまう。

(C):波束の収縮があると困ること:
一番シンプルな測定器は、「電子カウンター」である。 この場合は、電子は電子カウンターに吸収されて、もはやどういう状態になったかは分からなくなってしまう。 

したがって、「波束の収縮」があったとしても、あたかも「波束の収縮」があるような測定の仕方を工夫して、初めて実現できると考える。


--------
パルメニデスは、2500年後の「言語的解釈」を予見していたとしたら、宇宙人だったかもしれませんね。 それとも、2500年も前の主張などいかようにも解釈できるのだから、「パルメニデス哲学=言語的コペンハゲン解釈」などと強調しない方が良いかもしれない。 そもそも、パルメニデスは二元論を主張しなかったはずである。 「論理」に二元論など無いからである。




科学哲学(二元論的観念論)

量子言語(=測定理論)は、統計学と量子論を合わせた程度の強力な記述力を有する言語である。 量子言語の習得には、いろいろなアプローチの方法があっていい。 このブログでは、数物には関わらず、哲学【二元論的観念論】をメインに量子言語を紹介して、西洋哲学史の本流は常に量子言語に向かって進歩してきたことを確認する。ブログとは、一旦書いてしまうと、訂正するのが億劫になるものである。 したがって、本ブログと大幅な変更があるわけではないが、現時点での正式バージョンは【Western philosophy(PDF)】を見よ。

目次

  • 0:【Home】リンク付き目次(スマホ利用者用)
  • 1:量子力学の観測・解釈問題の解決
  • 2(上):科学哲学とは? (形而上学;統計学;量子力学)
  • 2(下):世界記述(至上)主義
  • 3(上):1+1=2:発明王エジソン;形而上学
  • 3(中):論理実証主義と形而上学
  • 3(下):ケルヴィン卿の形而上学
  • 4(上): 測定理論(=量子言語); 世界記述法の分類
  • 4(中):ソーカル事件の「脱構築」
  • 4(下)論考、知の欺瞞、量子言語
  • 5:古典力学的世界観;量子力学的世界観
  • 6:科学と統計学;量子言語;
  • 7:赤い糸 : 量子力学の観測と因果関係
  • 8:運命の量子的出会い(観測と因果律)
  • 9:コペンハーゲン解釈は虚構;因果と測定
  • 10: $[$一元論、二元論$]$×$[$実在論、観念論$]$
  • 11:離別の予感(測定と因果)
  • 12:ピタゴラス(万物は数)
  • 13:パルメニデスとヘラクレイトス;運動・変化
  • 14: 科学とは何か? 運動;因果律;確率;測定
  • 15:パルメニデスの理屈っぽさ: ゼノンのパラドックス
  • 16(上):ゼノンのパラドックスは未解決問題
  • 16(補): ハジキの公式:形而上学的命題
  • 16(中):「アキレスと亀」は未解決問題
  • 16(下): ゼノンのパラドックスの必然性
  • 17(上):存在論(パルメニデス)
  • 17(下):存在とは何か?(パルメニデス)
  • 18(上):[人気No.3]哲学は進歩したか?
  • 18:無知の知:ソクラテスの詭弁
  • 19:人間は万物の尺度:プロタゴラス×ソクラテス;倫理哲学
  • 20:イデア論:プラトンの詭弁
  • 21(上):プラトンのイデアは絶対基準・測定器のこと
  • 21(下): 西洋哲学はプラトンの脚注
  • 22(上):万学の祖アリストテレス;形相,質料
  • 22(下): プラトンとアリストテレスの融合;スコラ哲学
  • 23(上):アリストテレスの目的因
  • 23(下):三段論法を信じますか? アリストテレス
  • 23(補):必要条件と十分条件
  • 24(上):アリスタルコス(古代の地動説);アルキメデス
  • 24(下):アリスタルコス:古代の地動説
  • 25(上):ユークリッド幾何学--平行線の公準
  • 25(下):言語と数学;公理主義
  • 26:エラトステネス:古代最大の測定者
  • 27:総括〈ギリシャ vs.アレクサンドリア〉
  • 28:天動説(プトレマイオス)
  • 29:古代科学の三つの集大成
  • 30:アウグスティヌスとプラトン哲学
  • 31:アウグスティヌスと時間論;告白
  • 32:十字軍:イスラム文化(アリストテレス)の流入
  • 32.5: 位取り記数法(アラビア数字;ゼロの発見)
  • 33:神の存在証明(アンセルムス);スコラ哲学
  • 34:普遍論争と「存在・実在」;スコラ哲学
  • 36:[人気No.5]オッカムの剃刀(節約の原理)
  • 37:パラダイムシフト;コペルニクスとニュートン
  • 37(中):プラトンとアリストテレス;アテナイの学堂
  • 37(下):帰納主義;イドラ;ベーコン;経験論の祖
  • 38:天動説から地動説へ
  • 39:地動説・天動説とは、何か?
  • 40:ガリレオと地動説;ピサの斜塔;裁判
  • 41:ガリレオからニュートンへ
  • 42:プリンキピアと地動説
  • 43:因果関係とは何か?
  • 44:実在的因果関係(物理学)
  • 45:認識的因果関係(ヒューム・カント)
  • 46:数学的因果関係(ピタゴラス教団)
  • 47:言語的因果関係
  • 48:我思う、 ゆえに我在り(方法序説:デカルト)
  • 49:コギト命題からデカルト図式へ
  • 49下:物心二元論・心身二元論
  • 50:オカルト図式?
  • 52:中二病(デカルトの懐疑)
  • 53:世界記述と非ユークリッド的転回
  • 54:二元論・観念論に対する誤解
  • 56:ジョン・ロック$[$人間知性論$]$タブラ・ラーサ
  • 57:イギリス経験論の祖:ジョン・ロック;第ニ次性質
  • 58:大陸合理主義:ライプニッツ; 生得説
  • 59(上):日常言語はイギリス経験論的
  • 59(下):量子言語はカント哲学的
  • 60:唯心論:バークリー;存在するとは知覚されること
  • 61:懐疑主義:ヒューム
  • 62:実在的世界記述法と言語的世界記述法
  • 63:量子力学の道具主義化
  • 64:ライプニッツ・クラーク論争; 時空とは何か?
  • 65:コペンハーゲン解釈
  • 66:原点回帰:再びパルメニデスへ
  • 67:マクタガートのパラドックス:時間論:時制
  • 68:アウグスティヌスの時間論:主観的時間
  • 70:カント:二律背反(アンチノミー)
  • 71:「我思う、ゆえに我あり」を疑う
  • 72:カントの物自体; 模写説から構成説
  • 73:コペルニクス的転回;純粋理性批判
  • 74:純粋理性批判; アプリオリな総合判断;超越論的観念論
  • 78:カント登場の必然性
  • 78(補): 功利主義;ベンサム;最大多数の最大幸福
  • 79(上): ラプラスの魔:ゼノンのパラドックス
  • 79(下): ホーキング博士の哲学批判
  • 80:カントール:集合論
  • 80(下):空集合と選択公理
  • 81:数理論理学:数学のような、哲学のような
  • 82:弁証法という諺:ヘーゲル
  • 825: プラグマティズム(実用主義)のジレンマ
  • 83:論理哲学論考;ウィトゲンシュタイン
  • 84:言語論的転回;言語哲学
  • 86: 量子力学の解釈とは何か?
  • 88:量子言語の記述力;言語ゲーム;語りえぬもの;ウィトゲンシュタイン
  • 88.5:[人気No.1]心身問題の解決
  • 89: ボーア × アインシュタインの量子力学論争
  • 90: 二つの量子力学
  • 91: 数学の三大発見
  • 92: フォン・ノイマン;量子力学
  • 93: アリストテレス、ライプニッツ、フォン・ノイマン
  • 94: 確率の歴史
  • 95:確率の哲学: 確率とは何か?
  • 96: 確率論 vs. 量子言語
  • 97: 確率論: 二元論の消去
  • 98: 主観的時間; 科学哲学論争
  • 99: フィッシャーの最尤法
  • 100: 科学哲学の大きな物語の終焉
  • 補101:測定・推定・制御の科学哲学
  • 補102:ベイズ統計・ベイズの定理
  • 補103: 確率論と統計学
  • 150:量子力学再入門: ヒルベルト空間法
  • 152:エルミート行列のスペクトラル分解:量子力学再入門
  • 154:スピン:量子力学再入門
  • 156:ハミルトニアンの量子化:量子力学速習
  • 158:同時測定と可換条件:量子力学再入門
  • 160:ド・ブロイのパラドックス:量子力学再入門
  • 162:EPRパラドックス:量子力学再考
  • 164ベルの不等式:量子力学再考
  • 166:[人気No.4]ハイゼンベルグの不確定性原理はキャッチコピー
  • 168:EPRパラドックスの結末
  • 170:ハイゼンベルグの不確定性原理とEPRパラドックスは矛盾?
  • 174:[人気No.2]射影仮説:波束の収縮
  • 176:量子デコヒーレンス
  • 178:ハイゼンベルグ描像
  • 180:正準交換関係の不確定性関係
  • 182:行列のトレース
  • 184:ベルトランの逆説
  • 190:全射・単射・全単射
  • 192:」単射(順列)・全単射(スターリング数)
  • 500:量子言語入門(大学院講義ノート)