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78.8: 功利主義; ベンサム; 最大多数の最大幸福


第78(補)話
最大多数の最大幸福
ベンサム、功利主義、カント、純粋理性批判


「カント vs. ベンサム」を議論したい。 そのために、 まずカントの復習をする。
世界記述の哲学(真理追究問題)


復習をしよう。 
(A)
ニュートン力学は、その偉大さゆえに「哲学の枠」に収まりきれなかったが、やはり、
  • 「ニュートン力学は最高の哲学」

という思いは、当時の哲学者たちの共通認識だったと思う。

そして、 ジョン・ロックやライプニッツ等は、ニュートン力学に比肩する世界記述法を目指したはずと思う。
すなわち、 デカルトのコギト命題「我思う、故に我あり」を疑う余地ののない真理として、これを出発点として、世界記述の哲学を作り上げようという試みが、次の対立構造を生んだ。
  • イギリス経験主義(ジョン・ロック) vs. 大陸合理主義(ライプニッツ)

この対立構造という演出は、 認識論として近代哲学の隆盛をもたらし、 その統合者としてのカント登場で絶頂期を迎えた。 次の通りです。
(B):デカルト{イギリス経験論
大陸合理主義
}カント

今から思えば、
  • ニュートン力学と比べれば、 認識論(B)は全く中身がなかった

かもしれない。 本当に「認識」を理解したいのならば、脳科学に突き進む以外に方法はないと思うからである。

(C):
:しかしながら、(B)の過程で彼らが真理追究の気分(すなわち、 ニュートンの気分)だった

ことは確かだと思う。
以上が復習である。


政治革命と産業革命
下の年表を見れば、次を思うだろう。
(D1)
カントは、ヨーロッパの端っこ(のドイツのケーニヒスベルク大学)で観念論哲学に没頭していたが、そんなご時世ではなかった。
(D2)
ベンサムは「最大多数の最大幸福(the greatest happiness of the greatest number)」を主張して、時流に乗った。



1709 製鉄業者ダービー、コークス製鉄法を開発
1712 機械技師ニューコメン、蒸気機関を実用化
1733 織工ジョン・ケイ、飛び杼を発明
1748 モンテスキュー 「法の精神」,三権分立
1760年代から1830年代 イギリスの産業革命
1762 ルソー 「民約論」,自由平等, 主権在民
1765 ワットの蒸気機関を完成させる。
1776 アメリカ独立宣言
1776 古典派経済学者アダム・スミス『国富論』
(自由放任主義)
1781 カント;純粋理性批判
1789 フランス革命
1789 功利主義 ベンサム『道徳および立法の諸原理序説』
(最大多数の最大幸福)
1796 医師ジェンナー、種痘法を発明
1798 古典派経済学者マルサス『人口論』
1830前後:非ユークリッド幾何学(ガウス,ロバチェフスキー,ボーヤイ)


功利主義(制御問題)

功利主義とは、英国のベンサムやミルによって唱えられた学説で、幸福を人生や社会の最大目的とする、 すなわち、
(E)
倫理・政治問題を「最大多数の最大幸福(the greatest happiness of the greatest number)」を原理とする制御問題に帰着させるアイデア

で、 多分、 哲学史上最大級の偉業と考える。
ベンサム派からすれば、観念論の系譜(B)よりも、次の(F)だろう。
(F): デカルトイギリス経験論功利主義
さて、功利主義の必然として、次が帰着される
(G)
「最大多数の最大幸福」を実現させるように、法律が作られるべきである。 そして、その法律によって、社会制度、道徳・倫理・「善・悪」が決まる

である。

功利主義が次を後押しした
  • 自由・平等、主権在民、選挙制度、議会制度、 民主主義

ことは明らかで、ベンサムによる
  • 「最大多数の最大幸福」というマジックワードの発見

は、今日の我々の自由主義社会の実現のための大きな推進力となった。
もちろん、
(H)
「最大多数の最大幸福」は形而上学的命題で意味不明な念仏にすぎない。 しかし、 それでも
  • この念仏が、世界を動かした

ことは事実と思う。 

ベンサムのアイデア(倫理・政治問題を制御問題に帰す)は、
  • シンプル かつ パワフル

で、一番生産的だと思う。 説教臭くないところもいい。


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さて、 「カント vs. ベンサム」の次の比較は教訓的と思う。
(I1)
カントの「純理」が無かったとしても、世界は特に変わっていないだろう。
しかし、ベンサムが「最大多数の最大幸福」というマジックワードを発見しなかったら、現代の世界状況は全く変わっていると思う。
(I2)
しかし、一般的には、カントの方がベンサムよりも偉大な哲学者とされていて、この理由は不可解であるが、やはり、
  • 真理追究問題 vs. 制御問題

更に断定的に言ってしまうと、
  • 神が作った問題 vs. 人為的問題

に関係するかもしれない。 「神の問題」を追究したカントのほうが偉いである。 

メチャクチャな理屈と思うかもしれないが、こう考えないと、
  • 全く役に立たない「デカルト=カント哲学」がもてはやされたという事実を説明できない

と考える。


科学哲学(二元論的観念論)

量子言語(=測定理論)は、統計学と量子論を合わせた程度の強力な記述力を有する言語である。 量子言語の習得には、いろいろなアプローチの方法があっていい。 このブログでは、数物には関わらず、哲学【二元論的観念論】をメインに量子言語を紹介して、西洋哲学史の本流は常に量子言語に向かって進歩してきたことを確認する。ブログとは、一旦書いてしまうと、訂正するのが億劫になるものである。 したがって、本ブログと大幅な変更があるわけではないが、現時点での正式バージョンは【Western philosophy(PDF)】を見よ。

目次

  • 0:【Home】リンク付き目次(スマホ利用者用)
  • 1:量子力学の観測・解釈問題の解決
  • 2(上):科学哲学とは? (形而上学;統計学;量子力学)
  • 2(下):世界記述(至上)主義
  • 3(上):1+1=2:発明王エジソン;形而上学
  • 3(中):論理実証主義と形而上学
  • 3(下):ケルヴィン卿の形而上学
  • 4(上): 測定理論(=量子言語); 世界記述法の分類
  • 4(中):ソーカル事件の「脱構築」
  • 4(下)論考、知の欺瞞、量子言語
  • 5:古典力学的世界観;量子力学的世界観
  • 6:科学と統計学;量子言語;
  • 7:赤い糸 : 量子力学の観測と因果関係
  • 8:運命の量子的出会い(観測と因果律)
  • 9:コペンハーゲン解釈は虚構;因果と測定
  • 10: $[$一元論、二元論$]$×$[$実在論、観念論$]$
  • 11:離別の予感(測定と因果)
  • 12:ピタゴラス(万物は数)
  • 13:パルメニデスとヘラクレイトス;運動・変化
  • 14: 科学とは何か? 運動;因果律;確率;測定
  • 15:パルメニデスの理屈っぽさ: ゼノンのパラドックス
  • 16(上):ゼノンのパラドックスは未解決問題
  • 16(補): ハジキの公式:形而上学的命題
  • 16(中):「アキレスと亀」は未解決問題
  • 16(下): ゼノンのパラドックスの必然性
  • 17(上):存在論(パルメニデス)
  • 17(下):存在とは何か?(パルメニデス)
  • 18(上):[人気No.3]哲学は進歩したか?
  • 18:無知の知:ソクラテスの詭弁
  • 19:人間は万物の尺度:プロタゴラス×ソクラテス;倫理哲学
  • 20:イデア論:プラトンの詭弁
  • 21(上):プラトンのイデアは絶対基準・測定器のこと
  • 21(下): 西洋哲学はプラトンの脚注
  • 22(上):万学の祖アリストテレス;形相,質料
  • 22(下): プラトンとアリストテレスの融合;スコラ哲学
  • 23(上):アリストテレスの目的因
  • 23(下):三段論法を信じますか? アリストテレス
  • 23(補):必要条件と十分条件
  • 24(上):アリスタルコス(古代の地動説);アルキメデス
  • 24(下):アリスタルコス:古代の地動説
  • 25(上):ユークリッド幾何学--平行線の公準
  • 25(下):言語と数学;公理主義
  • 26:エラトステネス:古代最大の測定者
  • 27:総括〈ギリシャ vs.アレクサンドリア〉
  • 28:天動説(プトレマイオス)
  • 29:古代科学の三つの集大成
  • 30:アウグスティヌスとプラトン哲学
  • 31:アウグスティヌスと時間論;告白
  • 32:十字軍:イスラム文化(アリストテレス)の流入
  • 32.5: 位取り記数法(アラビア数字;ゼロの発見)
  • 33:神の存在証明(アンセルムス);スコラ哲学
  • 34:普遍論争と「存在・実在」;スコラ哲学
  • 36:[人気No.5]オッカムの剃刀(節約の原理)
  • 37:パラダイムシフト;コペルニクスとニュートン
  • 37(中):プラトンとアリストテレス;アテナイの学堂
  • 37(下):帰納主義;イドラ;ベーコン;経験論の祖
  • 38:天動説から地動説へ
  • 39:地動説・天動説とは、何か?
  • 40:ガリレオと地動説;ピサの斜塔;裁判
  • 41:ガリレオからニュートンへ
  • 42:プリンキピアと地動説
  • 43:因果関係とは何か?
  • 44:実在的因果関係(物理学)
  • 45:認識的因果関係(ヒューム・カント)
  • 46:数学的因果関係(ピタゴラス教団)
  • 47:言語的因果関係
  • 48:我思う、 ゆえに我在り(方法序説:デカルト)
  • 49:コギト命題からデカルト図式へ
  • 49下:物心二元論・心身二元論
  • 50:オカルト図式?
  • 52:中二病(デカルトの懐疑)
  • 53:世界記述と非ユークリッド的転回
  • 54:二元論・観念論に対する誤解
  • 56:ジョン・ロック$[$人間知性論$]$タブラ・ラーサ
  • 57:イギリス経験論の祖:ジョン・ロック;第ニ次性質
  • 58:大陸合理主義:ライプニッツ; 生得説
  • 59(上):日常言語はイギリス経験論的
  • 59(下):量子言語はカント哲学的
  • 60:唯心論:バークリー;存在するとは知覚されること
  • 61:懐疑主義:ヒューム
  • 62:実在的世界記述法と言語的世界記述法
  • 63:量子力学の道具主義化
  • 64:ライプニッツ・クラーク論争; 時空とは何か?
  • 65:コペンハーゲン解釈
  • 66:原点回帰:再びパルメニデスへ
  • 67:マクタガートのパラドックス:時間論:時制
  • 68:アウグスティヌスの時間論:主観的時間
  • 70:カント:二律背反(アンチノミー)
  • 71:「我思う、ゆえに我あり」を疑う
  • 72:カントの物自体; 模写説から構成説
  • 73:コペルニクス的転回;純粋理性批判
  • 74:純粋理性批判; アプリオリな総合判断;超越論的観念論
  • 78:カント登場の必然性
  • 78(補): 功利主義;ベンサム;最大多数の最大幸福
  • 79(上): ラプラスの魔:ゼノンのパラドックス
  • 79(下): ホーキング博士の哲学批判
  • 80:カントール:集合論
  • 80(下):空集合と選択公理
  • 81:数理論理学:数学のような、哲学のような
  • 82:弁証法という諺:ヘーゲル
  • 825: プラグマティズム(実用主義)のジレンマ
  • 83:論理哲学論考;ウィトゲンシュタイン
  • 84:言語論的転回;言語哲学
  • 86: 量子力学の解釈とは何か?
  • 88:量子言語の記述力;言語ゲーム;語りえぬもの;ウィトゲンシュタイン
  • 88.5:[人気No.1]心身問題の解決
  • 89: ボーア × アインシュタインの量子力学論争
  • 90: 二つの量子力学
  • 91: 数学の三大発見
  • 92: フォン・ノイマン;量子力学
  • 93: アリストテレス、ライプニッツ、フォン・ノイマン
  • 94: 確率の歴史
  • 95:確率の哲学: 確率とは何か?
  • 96: 確率論 vs. 量子言語
  • 97: 確率論: 二元論の消去
  • 98: 主観的時間; 科学哲学論争
  • 99: フィッシャーの最尤法
  • 100: 科学哲学の大きな物語の終焉
  • 補101:測定・推定・制御の科学哲学
  • 補102:ベイズ統計・ベイズの定理
  • 補103: 確率論と統計学
  • 150:量子力学再入門: ヒルベルト空間法
  • 152:エルミート行列のスペクトラル分解:量子力学再入門
  • 154:スピン:量子力学再入門
  • 156:ハミルトニアンの量子化:量子力学速習
  • 158:同時測定と可換条件:量子力学再入門
  • 160:ド・ブロイのパラドックス:量子力学再入門
  • 162:EPRパラドックス:量子力学再考
  • 164ベルの不等式:量子力学再考
  • 166:[人気No.4]ハイゼンベルグの不確定性原理はキャッチコピー
  • 168:EPRパラドックスの結末
  • 170:ハイゼンベルグの不確定性原理とEPRパラドックスは矛盾?
  • 174:[人気No.2]射影仮説:波束の収縮
  • 176:量子デコヒーレンス
  • 178:ハイゼンベルグ描像
  • 180:正準交換関係の不確定性関係
  • 182:行列のトレース
  • 184:ベルトランの逆説
  • 190:全射・単射・全単射
  • 192:」単射(順列)・全単射(スターリング数)
  • 500:量子言語入門(大学院講義ノート)