記事一覧

2(上):科学哲学とは? (形而上学;統計学;量子力学)

科学哲学

さて

(A):形而上学:

  • 形而上学とは、実験で白黒を付けることができない命題・主張に関する学問である。


たとえば、 形而上学的命題としては、
  • 「神は存在する」、「1+1=2」、諺「猿も木から落ちる」、 「私は彼女を愛している」、 「我思う、 ゆえに我あり」、「色即是空、空即是色」,「《速さ》 ×《時間》 =《距離》 」、「正反合」、「適者生存」、
等いろいろある。 このブログでは、単純に考えて(数学は形而上学的言語であるが、普通は観念論とは言わないが)、
  • 形而上学=観念論=言語
と思って読み進めればいいだろう
これらは、後日に説明する。さらに、

(B):科学哲学:

  • (B1):科学哲学の最も本質的なテーマは、科学を記述する言語を発明することである。

たとえば、ニュートンは「ニュートン力学」という言語体系を発明し、アインシュタインは「相対性理論」という言語体系を発明した。 これらは形而下学的言語体系である。 しかし、このブログでは、形而上学的言語体系(特に、「量子言語」)に興味を集中する。
このブログで徐々に説明していくことであるが、 (物理学を含めない部分でも)西洋哲学は非常に科学的であり、西洋哲学史は「科学を記述する言語の模索の歴史」と言っても過言ではない。 そうならば、
  • (B2):科学哲学=西洋哲学の本流=二元論的観念論

と言い切った方がスッキリする。


「科学哲学とは何か?」という問い掛けは愚問と思う。 偉い人の発言を鵜呑みにしたり、流行を追ってしまえば、 行き着く先は「オワコン」だろう。 要は、
  • 「科学で重要なこと」と「哲学で重要なこと」の両方の共通部分を追究すればよい。 それが「(世間で言われている)科学哲学」でなかったとしても、それはそれで良しとしよう。 
しかし、そうすれば、必然的に、
  • 【科学哲学の中心的テーマ】=【科学を記述する言語を発明すること】
となると信じる。 というか、これに異論を唱える人はいないだろう。


科学哲学は、「次のように在るべき」と考えるのには異論がないと思う。

科学哲学の本来の在り方

 一般の科学者と哲学者に受けいれらる「科学哲学」があるとしたら、次の(C1)-(C5)を満たす理論であると思う。
(C1):形而上学であること
(C2):科学を行なう際に、指針を与えて、 科学者にとっては不可欠である
(C3):計算可能な形式をもつこと。 すなわち、数量的な議論ができる
(C4):役に立つこと。 すなわち、「(俗な意味で)儲け話」であること
(C5):伝統的な哲学(二元論的観念論)の発展の到達点であって、この理論によって過去の哲学の未解決問題が次々と解ける


そうだとしても、
  • こんなこと((C1)-(C5))が実現するとは、夢のような話
と思うかもしれない。 



統計学は「現代の論理学」である
論理、数学、物理学を尊重する偏見(しかも、 統計学を軽視する偏見)が、哲学愛好家の間に漂っていると思う。 しかし、
  •  論理学、 数学、 物理学、 統計学の四つの中で、哲学に最も親和性のあるのは統計学である。
論理学、 数学、 物理学など知らなくても哲学はできるが、統計学は必須である。 すこし挑発的な言い方をすると、
  • 極めて特殊な場合の統計学(すなわち、$\{ 0,1 \}$-値非確率的統計学)が論理学である。 すなわち、極めて雑な統計学が論理である。 「論理=厳密」は真逆な思い込みで、実際は「論理=曖昧」である。 事実、数量化しにくい文系の学問では論理の重要さが強調されるが、数学や物理では論理の重要さは強調されない。 要求されるのは計算力である。
  • したがって、国家とか企業とかが決断する時に、論理ではなくて統計を使うのである。 
    • 天気予報、株価の予測、ロボットの制御、指紋照合、DNA鑑定、感染症の予測、
    も統計学である。 三段論法とか数理論理学は実際には役に立たない。もちろん、「数学の基礎付けとしての数理論理」もあるが、この「論理」は数学者に任せておけばよい。
    もう一度、念を押して置こう

    統計学は「現代の論理学」である

    論理学と統計学の逆転は一般に常識化されているわけではない。 統計学者でも、「言われてみれば、そうだが」という程度と思う。
    統計学の本を見ればわかることであるが、大抵の本は「統計的手法の羅列」に終始していて、しかも、あたかも数学の一分野のように著されているからである。 これでは、「統計学は『現代の論理学』である」が伝わるわけがない。






統計学:量子言語の最強のライバル: 敵か味方か
しかし、「上の(C1)-(C5)の実現は夢のような話」というわけでもない。 たとえば、
  • 統計学は、上の(C1)-(C4)を完全に満たしている
 そして、
(D):諸科学とは、諸現象を統計学で記述すること
と言ってもよい。
したがって、

  •  統計学は、最強の学問であり、唯一の成功した科学哲学である 
と言っても過言ではない。
しかし、 そうならば、「なぜ、統計学は(C5)を満たさないのだろうか?」を追究したくなる。 
この流れの中では、我々の進むべき道は、次の(E1)と(E2)の二択しかない。
(E1):伝統的哲学(二元論的観念論)を過去の遺物として抹消して、統計学を現状維持とする
(E2):(C5)を満たすように統計学を再構築する
もちろん、このブログを書いたということは、我々は「前者(E1):フィッシャー(統計学)」よりも「後者(E2):プラトン=デカルト=カント(哲学)」を選ぶということである。
結論は簡単で、 (E2)のためには、
  • 統計学を、二元論的基盤の上に再構築すればよい。 これでは漠然としていると言うならば、突飛と思われるかもしれないが、
    • 「量子力学のことわざ化」
    を遂行すればよい。 そして、これが「量子言語」である。
     
となる。
「統計学と量子言語の関係」は、ざっくり言えば、「ニュートン力学と量子力学の関係」みたいなものである。  「手軽さ」という意味では、むしろ統計学のほうが勝るかもしれない。 しかし、上の二元論的観念論(C5)に関しては、量子言語が圧倒的に優位になる。 したがって、
  • このブログの興味は「(C5):二元論的観念論」に集中する。
二元論的観念論の現状は楽観できる状況にない。 ホーキング博士も危惧しているように(第79(下)話「ホーキング博士」参照)、
  • アリストテレスからカントに至る哲学の偉大な伝統からの、現代哲学のなんという凋落ぶりだろう!
    (What a comedown from the great tradition of philosophy from Aristotle to Kant!)
はもっともなことであるが、まだ見捨てるのは早計と思う。
以上に述べたことが達成されれば、 上の(D)を次の(F)に書き換えることが出来る。

(F):諸科学とは、諸現象を量子言語で記述すること    (もちろん、 「〈(D)の諸科学〉 $\subsetneq$ 〈(F)の諸科学〉」である)

すなわち、
  •   我々の目的は、「(D)を(F)に書き換える」こと  
である。

---------------
形而上学と形而下学の線引きはかなり微妙です。 たとえば、
  • 彼は私を愛している
という最も切実な命題すら、実験で白黒つけることはできないかもしれない。「彼の脳波」を完璧に測定しても、「愛してる」の定義が曖昧だからです。



文芸としての科学哲学
科学哲学は様々な側面を持つべきと思う。 「科学・疑似科学」や「反証可能性」とかも重要な側面の一つである。 数量的な側面だけではなくて、哲学は文芸的な側面も持つべきと考える。 この(数物無しの)ブログも量子言語の文芸的側面の強化のために書いた。 統計学の弱点は文芸部分の強化がしづらいことである。 この理由で、一般には統計学は科学哲学と見なされないのだと思う。



科学哲学(二元論的観念論)

量子言語(=測定理論)は、統計学と量子論を合わせた程度の強力な記述力を有する言語である。 量子言語の習得には、いろいろなアプローチの方法があっていい。 このブログでは、数物には関わらず、哲学【二元論的観念論】をメインに量子言語を紹介して、西洋哲学史の本流は常に量子言語に向かって進歩してきたことを確認する。ブログとは、一旦書いてしまうと、訂正するのが億劫になるものである。 したがって、本ブログと大幅な変更があるわけではないが、現時点での正式バージョンは【Western philosophy(PDF)】を見よ。

目次

  • 0:【Home】リンク付き目次(スマホ利用者用)
  • 1:量子力学の観測・解釈問題の解決
  • 2(上):科学哲学とは? (形而上学;統計学;量子力学)
  • 2(下):世界記述(至上)主義
  • 3(上):1+1=2:発明王エジソン;形而上学
  • 3(中):論理実証主義と形而上学
  • 3(下):ケルヴィン卿の形而上学
  • 4(上): 測定理論(=量子言語); 世界記述法の分類
  • 4(中):ソーカル事件の「脱構築」
  • 4(下)論考、知の欺瞞、量子言語
  • 5:古典力学的世界観;量子力学的世界観
  • 6:科学と統計学;量子言語;
  • 7:赤い糸 : 量子力学の観測と因果関係
  • 8:運命の量子的出会い(観測と因果律)
  • 9:コペンハーゲン解釈は虚構;因果と測定
  • 10: $[$一元論、二元論$]$×$[$実在論、観念論$]$
  • 11:離別の予感(測定と因果)
  • 12:ピタゴラス(万物は数)
  • 13:パルメニデスとヘラクレイトス;運動・変化
  • 14: 科学とは何か? 運動;因果律;確率;測定
  • 15:パルメニデスの理屈っぽさ: ゼノンのパラドックス
  • 16(上):ゼノンのパラドックスは未解決問題
  • 16(補): ハジキの公式:形而上学的命題
  • 16(中):「アキレスと亀」は未解決問題
  • 16(下): ゼノンのパラドックスの必然性
  • 17(上):存在論(パルメニデス)
  • 17(下):存在とは何か?(パルメニデス)
  • 18(上):[人気No.3]哲学は進歩したか?
  • 18:無知の知:ソクラテスの詭弁
  • 19:人間は万物の尺度:プロタゴラス×ソクラテス;倫理哲学
  • 20:イデア論:プラトンの詭弁
  • 21(上):プラトンのイデアは絶対基準・測定器のこと
  • 21(下): 西洋哲学はプラトンの脚注
  • 22(上):万学の祖アリストテレス;形相,質料
  • 22(下): プラトンとアリストテレスの融合;スコラ哲学
  • 23(上):アリストテレスの目的因
  • 23(下):三段論法を信じますか? アリストテレス
  • 23(補):必要条件と十分条件
  • 24(上):アリスタルコス(古代の地動説);アルキメデス
  • 24(下):アリスタルコス:古代の地動説
  • 25(上):ユークリッド幾何学--平行線の公準
  • 25(下):言語と数学;公理主義
  • 26:エラトステネス:古代最大の測定者
  • 27:総括〈ギリシャ vs.アレクサンドリア〉
  • 28:天動説(プトレマイオス)
  • 29:古代科学の三つの集大成
  • 30:アウグスティヌスとプラトン哲学
  • 31:アウグスティヌスと時間論;告白
  • 32:十字軍:イスラム文化(アリストテレス)の流入
  • 32.5: 位取り記数法(アラビア数字;ゼロの発見)
  • 33:神の存在証明(アンセルムス);スコラ哲学
  • 34:普遍論争と「存在・実在」;スコラ哲学
  • 36:[人気No.5]オッカムの剃刀(節約の原理)
  • 37:パラダイムシフト;コペルニクスとニュートン
  • 37(中):プラトンとアリストテレス;アテナイの学堂
  • 37(下):帰納主義;イドラ;ベーコン;経験論の祖
  • 38:天動説から地動説へ
  • 39:地動説・天動説とは、何か?
  • 40:ガリレオと地動説;ピサの斜塔;裁判
  • 41:ガリレオからニュートンへ
  • 42:プリンキピアと地動説
  • 43:因果関係とは何か?
  • 44:実在的因果関係(物理学)
  • 45:認識的因果関係(ヒューム・カント)
  • 46:数学的因果関係(ピタゴラス教団)
  • 47:言語的因果関係
  • 48:我思う、 ゆえに我在り(方法序説:デカルト)
  • 49:コギト命題からデカルト図式へ
  • 49下:物心二元論・心身二元論
  • 50:オカルト図式?
  • 52:中二病(デカルトの懐疑)
  • 53:世界記述と非ユークリッド的転回
  • 54:二元論・観念論に対する誤解
  • 56:ジョン・ロック$[$人間知性論$]$タブラ・ラーサ
  • 57:イギリス経験論の祖:ジョン・ロック;第ニ次性質
  • 58:大陸合理主義:ライプニッツ; 生得説
  • 59(上):日常言語はイギリス経験論的
  • 59(下):量子言語はカント哲学的
  • 60:唯心論:バークリー;存在するとは知覚されること
  • 61:懐疑主義:ヒューム
  • 62:実在的世界記述法と言語的世界記述法
  • 63:量子力学の道具主義化
  • 64:ライプニッツ・クラーク論争; 時空とは何か?
  • 65:コペンハーゲン解釈
  • 66:原点回帰:再びパルメニデスへ
  • 67:マクタガートのパラドックス:時間論:時制
  • 68:アウグスティヌスの時間論:主観的時間
  • 70:カント:二律背反(アンチノミー)
  • 71:「我思う、ゆえに我あり」を疑う
  • 72:カントの物自体; 模写説から構成説
  • 73:コペルニクス的転回;純粋理性批判
  • 74:純粋理性批判; アプリオリな総合判断;超越論的観念論
  • 78:カント登場の必然性
  • 78(補): 功利主義;ベンサム;最大多数の最大幸福
  • 79(上): ラプラスの魔:ゼノンのパラドックス
  • 79(下): ホーキング博士の哲学批判
  • 80:カントール:集合論
  • 80(下):空集合と選択公理
  • 81:数理論理学:数学のような、哲学のような
  • 82:弁証法という諺:ヘーゲル
  • 825: プラグマティズム(実用主義)のジレンマ
  • 83:論理哲学論考;ウィトゲンシュタイン
  • 84:言語論的転回;言語哲学
  • 86: 量子力学の解釈とは何か?
  • 88:量子言語の記述力;言語ゲーム;語りえぬもの;ウィトゲンシュタイン
  • 88.5:[人気No.1]心身問題の解決
  • 89: ボーア × アインシュタインの量子力学論争
  • 90: 二つの量子力学
  • 91: 数学の三大発見
  • 92: フォン・ノイマン;量子力学
  • 93: アリストテレス、ライプニッツ、フォン・ノイマン
  • 94: 確率の歴史
  • 95:確率の哲学: 確率とは何か?
  • 96: 確率論 vs. 量子言語
  • 97: 確率論: 二元論の消去
  • 98: 主観的時間; 科学哲学論争
  • 99: フィッシャーの最尤法
  • 100: 科学哲学の大きな物語の終焉
  • 補101:測定・推定・制御の科学哲学
  • 補102:ベイズ統計・ベイズの定理
  • 補103: 確率論と統計学
  • 150:量子力学再入門: ヒルベルト空間法
  • 152:エルミート行列のスペクトラル分解:量子力学再入門
  • 154:スピン:量子力学再入門
  • 156:ハミルトニアンの量子化:量子力学速習
  • 158:同時測定と可換条件:量子力学再入門
  • 160:ド・ブロイのパラドックス:量子力学再入門
  • 162:EPRパラドックス:量子力学再考
  • 164ベルの不等式:量子力学再考
  • 166:[人気No.4]ハイゼンベルグの不確定性原理はキャッチコピー
  • 168:EPRパラドックスの結末
  • 170:ハイゼンベルグの不確定性原理とEPRパラドックスは矛盾?
  • 174:[人気No.2]射影仮説:波束の収縮
  • 176:量子デコヒーレンス
  • 178:ハイゼンベルグ描像
  • 180:正準交換関係の不確定性関係
  • 182:行列のトレース
  • 184:ベルトランの逆説
  • 190:全射・単射・全単射
  • 192:」単射(順列)・全単射(スターリング数)
  • 500:量子言語入門(大学院講義ノート)