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88.5: 心身問題の解決

心身問題に答えておこう。
その前に、量子言語の復習をすこし。

量子言語の復習
量子言語は二つの呪文(言語ルール1(測定) と言語ルール2(因果関係)からなり、言語ルール1は以下の通り:
$\bullet$測定者(=私)が,$\omega$という状態をもつ物(=測定対象)に対して,測定器${\mathsf O}$で測定したとき,測定値$x$を得る確率$P_{{\mathsf O}}^\omega(x) $である. 

ここではこれだけ知っていればOK

さて、心身問題の説明をする。

デカルトは、コギト命題「我思う。故に我あり」から始めて、二元論における三つのキーワード「① :心」、「② :身体」と「③:物(事)」に達した。 
ここで、次の問題が心身問題である。

心身問題
$(\sharp)$ 「①:心」と「②:身体」(と「「③:物(事)」)は如何に関係しているか?

である。

常識人ならば、こんな問題はオカルト問題で

「こんなオカルト問題に囚われているから哲学はダメなんだ」

とか

「こんなオカルト問題を哲学史上最大の難問と言っているから哲学はダメなんだ」

と思うだろう。 しかし、以下に示すようにそうでもない。


心身問題の解答
さて、キーワード対応(言語論的転回)


デカルト([①:心], [②:身体]) $\xrightarrow[\mbox{キーワード対応}]{\mbox{言語論的転回}}$ 量子言語([①:測定値],[②:測定器])


を思い出そう。
これから次を得る:
\begin{align}
\overset{\mbox{認識論的心身問題}}{
\underset{\mbox{心と身体の関係は如何?}}{\fbox{デカルト・カント}}}
\xrightarrow[ \mbox{ 言語論的転回}]{進歩}
\overset{\mbox{言語論的心身問題}}{\underset{\mbox{測定値と測定器の関係は如何?}}{\fbox{量子言語}}}
\tag{eq.1}
\end{align}
さて、最も確固たる二元論的観念論は量子言語なのだから、心身問題を量子言語の枠組み内で考えることは自然である。と言うより、デカルト・カントの認識論は世界記述法としては不完全で使えない。そうならば、
心身問題とは、「測定値と測定器の関係は如何?」を量子言語の枠組みで答えるしかない。

そうすると、「測定値」と「測定器」という言葉の使い方は言語ルール1(測定)に従うのだから、
($\flat_1$)心身問題の解答は言語ルール1で与えられる

である。すなわち、「測定値」と「測定器」の関係は、
($\flat_2$)測定者(=私)が,$\omega$という状態をもつ物(=測定対象)に対して,測定器${\mathsf O}$で測定したとき,測定値$x$を得る確率$P_{{\mathsf O}}^\omega(x) $である. 

となる。 以上。


因果問題の解答は言語ルール2で与えられるのだから、
これと上の解答($\flat_1$)をあわせて、次の同値関係が成立する。
\begin{align}
&\mbox{二元論的観念論を極める}
\nonumber
\\
\Leftrightarrow
&\mbox{量子言語を提案する}
\nonumber
\\
\Leftrightarrow
&\mbox{言語ルール1と言語ルール2を提案する}
\nonumber
\\
\Leftrightarrow
&\mbox{心身問題と因果問題を解く}
\tag{eq.2}
\end{align}
となる。



心身問題は、哲学史上最大の難問とされているわけで、上の解答にも現時点では賛否両論あると思う。 よく言えば、「エレガント」かもしれないが、悪く言えば「ズルい・問題のすり替え」という感想を持たれたと思う。 この解答自体は量子言語提案のころからわかっていることで、仲間内では精査済みのことである。 しかし、一般に広く検討を促す時期に来ていると判断して、次の論文を公表した。
[文献1]S. Ishikawa: "A final solution to the mind-body problem by quantum language"
Journal of quantum information science, Vo.7 No.2 2017, 48-56 (download free), 

The preprint is as follows:Reseach Report; Keio Math [KSTS/RR-17/003](S. Ishikawa )(download free),

現時点では、否定的意見もあるかもしれない。 しかし、もうそろそろデカルト=カントの認識論自体を根底から考え直す時期に来ていると思う。 「そもそも、デカルト=カントの認識論は必要だったのか?」とか「カントのやりたかったことは二元論的観念論の確立だったのでは?」等を根底から考え抜けば、結局、我々の解答に行き着くと確信する。

「ズルい」と言われようが、(eq2)で述べたように、二元論的観念論を極めた唯一の理論が量子言語なのだから、これに勝る解答はないと確信している。 さて、心身問題へのアプローチとしては次の二つの(A)案と(B)案が有力であるとされている。 
(A)つぎの発展:
\begin{align}\overset{\mbox{}}{
\underset{\mbox{}}{\fbox{デカルト・カント}}}
\xrightarrow[ \mbox{ 進歩}]{}
\overset{\mbox{}}{\underset{\mbox{}}{\fbox{フッサール}}}
\xrightarrow[ \mbox{ 進歩}]{}
\overset{\mbox{}}{\underset{\mbox{}}{\fbox{心の哲学(脳科学)}}}
\tag{eq.3}
\end{align}
という発展の中で徐々に明確にされていくという案。 「科学的に実験を重ねて」徐々に認知科学・脳科学が明かされていくことには、同意するがこの方向は哲学の方向ではないので却下したい。 哲学的には、
$$ \overset{\mbox{}}{
\underset{\mbox{}}{\fbox{デカルト・カント}}}
\xrightarrow[ \mbox{ 退歩}]{}
\overset{\mbox{}}{\underset{\mbox{}}{\fbox{フッサール}}}
$$
というのが量子言語の主張だからである。 デカルト・カント認識論からの哲学的進歩は(eq.1)であって、(eq.3)ではない。
したがって、(eq.3)案は却下される。 さらに言うならば、(eq3)の方向で、「心身問題」が徐々に解決されたとしても、そんなに驚くべきことは起こらない(cf. 54話:驚くべき仮説)と思う。 十分に予想されることであるが、AI・脳科学が発展して人間並(以上)の知的能力を持つロボットができるだろう。 そうだとしても、哲学者のできることはそれらについての評論ぐらいのものだろう。 心の哲学という分野に哲学的に面白いことが発生することはないだろう。 二元論的観念論を極めることの方が大きいと思う。
したがって、我々の解答は「すり替え」ではなくて、「本質の追究」であると考える。

(B)
心身問題は「心」などという意味不明な言葉を含む問題だから、「擬似問題」であり、 考える意味がないという案。
ようするに、「神の存在を証明せよ」という問題みたいなもの。 ウィトゲンシュタインの「語り得ぬことには沈黙しなければならない」である。 しかし、

「語り得ないこと」と「語り得ること」の線引きは言語に依存する。

したがって、心身問題とは、「これを語り得ることとできるような言語を提案せよ」という問題となる。 そしてこの解答が(eq.2)となる。
すなわち、心身問題は量子言語ならば語り得る。

以上であるが詳しくは上の[文献1]を見よ。







科学哲学(二元論的観念論)

量子言語(=測定理論)は、統計学と量子論を合わせた程度の強力な記述力を有する言語である。 量子言語の習得には、いろいろなアプローチの方法があっていい。 このブログでは、数物には関わらず、哲学【二元論的観念論】をメインに量子言語を紹介して、西洋哲学史の本流は常に量子言語に向かって進歩してきたことを確認する。ブログとは、一旦書いてしまうと、訂正するのが億劫になるものである。 したがって、本ブログと大幅な変更があるわけではないが、現時点での正式バージョンは【Western philosophy(PDF)】を見よ。

目次

  • 0:【Home】リンク付き目次(スマホ利用者用)
  • 1:量子力学の観測・解釈問題の解決
  • 2(上):科学哲学とは? (形而上学;統計学;量子力学)
  • 2(下):世界記述(至上)主義
  • 3(上):1+1=2:発明王エジソン;形而上学
  • 3(中):論理実証主義と形而上学
  • 3(下):ケルヴィン卿の形而上学
  • 4(上): 測定理論(=量子言語); 世界記述法の分類
  • 4(中):ソーカル事件の「脱構築」
  • 4(下)論考、知の欺瞞、量子言語
  • 5:古典力学的世界観;量子力学的世界観
  • 6:科学と統計学;量子言語;
  • 7:赤い糸 : 量子力学の観測と因果関係
  • 8:運命の量子的出会い(観測と因果律)
  • 9:コペンハーゲン解釈は虚構;因果と測定
  • 10: $[$一元論、二元論$]$×$[$実在論、観念論$]$
  • 11:離別の予感(測定と因果)
  • 12:ピタゴラス(万物は数)
  • 13:パルメニデスとヘラクレイトス;運動・変化
  • 14: 科学とは何か? 運動;因果律;確率;測定
  • 15:パルメニデスの理屈っぽさ: ゼノンのパラドックス
  • 16(上):ゼノンのパラドックスは未解決問題
  • 16(補): ハジキの公式:形而上学的命題
  • 16(中):「アキレスと亀」は未解決問題
  • 16(下): ゼノンのパラドックスの必然性
  • 17(上):存在論(パルメニデス)
  • 17(下):存在とは何か?(パルメニデス)
  • 18(上):[人気No.3]哲学は進歩したか?
  • 18:無知の知:ソクラテスの詭弁
  • 19:人間は万物の尺度:プロタゴラス×ソクラテス;倫理哲学
  • 20:イデア論:プラトンの詭弁
  • 21(上):プラトンのイデアは絶対基準・測定器のこと
  • 21(下): 西洋哲学はプラトンの脚注
  • 22(上):万学の祖アリストテレス;形相,質料
  • 22(下): プラトンとアリストテレスの融合;スコラ哲学
  • 23(上):アリストテレスの目的因
  • 23(下):三段論法を信じますか? アリストテレス
  • 23(補):必要条件と十分条件
  • 24(上):アリスタルコス(古代の地動説);アルキメデス
  • 24(下):アリスタルコス:古代の地動説
  • 25(上):ユークリッド幾何学--平行線の公準
  • 25(下):言語と数学;公理主義
  • 26:エラトステネス:古代最大の測定者
  • 27:総括〈ギリシャ vs.アレクサンドリア〉
  • 28:天動説(プトレマイオス)
  • 29:古代科学の三つの集大成
  • 30:アウグスティヌスとプラトン哲学
  • 31:アウグスティヌスと時間論;告白
  • 32:十字軍:イスラム文化(アリストテレス)の流入
  • 32.5: 位取り記数法(アラビア数字;ゼロの発見)
  • 33:神の存在証明(アンセルムス);スコラ哲学
  • 34:普遍論争と「存在・実在」;スコラ哲学
  • 36:[人気No.5]オッカムの剃刀(節約の原理)
  • 37:パラダイムシフト;コペルニクスとニュートン
  • 37(中):プラトンとアリストテレス;アテナイの学堂
  • 37(下):帰納主義;イドラ;ベーコン;経験論の祖
  • 38:天動説から地動説へ
  • 39:地動説・天動説とは、何か?
  • 40:ガリレオと地動説;ピサの斜塔;裁判
  • 41:ガリレオからニュートンへ
  • 42:プリンキピアと地動説
  • 43:因果関係とは何か?
  • 44:実在的因果関係(物理学)
  • 45:認識的因果関係(ヒューム・カント)
  • 46:数学的因果関係(ピタゴラス教団)
  • 47:言語的因果関係
  • 48:我思う、 ゆえに我在り(方法序説:デカルト)
  • 49:コギト命題からデカルト図式へ
  • 49下:物心二元論・心身二元論
  • 50:オカルト図式?
  • 52:中二病(デカルトの懐疑)
  • 53:世界記述と非ユークリッド的転回
  • 54:二元論・観念論に対する誤解
  • 56:ジョン・ロック$[$人間知性論$]$タブラ・ラーサ
  • 57:イギリス経験論の祖:ジョン・ロック;第ニ次性質
  • 58:大陸合理主義:ライプニッツ; 生得説
  • 59(上):日常言語はイギリス経験論的
  • 59(下):量子言語はカント哲学的
  • 60:唯心論:バークリー;存在するとは知覚されること
  • 61:懐疑主義:ヒューム
  • 62:実在的世界記述法と言語的世界記述法
  • 63:量子力学の道具主義化
  • 64:ライプニッツ・クラーク論争; 時空とは何か?
  • 65:コペンハーゲン解釈
  • 66:原点回帰:再びパルメニデスへ
  • 67:マクタガートのパラドックス:時間論:時制
  • 68:アウグスティヌスの時間論:主観的時間
  • 70:カント:二律背反(アンチノミー)
  • 71:「我思う、ゆえに我あり」を疑う
  • 72:カントの物自体; 模写説から構成説
  • 73:コペルニクス的転回;純粋理性批判
  • 74:純粋理性批判; アプリオリな総合判断;超越論的観念論
  • 78:カント登場の必然性
  • 78(補): 功利主義;ベンサム;最大多数の最大幸福
  • 79(上): ラプラスの魔:ゼノンのパラドックス
  • 79(下): ホーキング博士の哲学批判
  • 80:カントール:集合論
  • 80(下):空集合と選択公理
  • 81:数理論理学:数学のような、哲学のような
  • 82:弁証法という諺:ヘーゲル
  • 825: プラグマティズム(実用主義)のジレンマ
  • 83:論理哲学論考;ウィトゲンシュタイン
  • 84:言語論的転回;言語哲学
  • 86: 量子力学の解釈とは何か?
  • 88:量子言語の記述力;言語ゲーム;語りえぬもの;ウィトゲンシュタイン
  • 88.5:[人気No.1]心身問題の解決
  • 89: ボーア × アインシュタインの量子力学論争
  • 90: 二つの量子力学
  • 91: 数学の三大発見
  • 92: フォン・ノイマン;量子力学
  • 93: アリストテレス、ライプニッツ、フォン・ノイマン
  • 94: 確率の歴史
  • 95:確率の哲学: 確率とは何か?
  • 96: 確率論 vs. 量子言語
  • 97: 確率論: 二元論の消去
  • 98: 主観的時間; 科学哲学論争
  • 99: フィッシャーの最尤法
  • 100: 科学哲学の大きな物語の終焉
  • 補101:測定・推定・制御の科学哲学
  • 補102:ベイズ統計・ベイズの定理
  • 補103: 確率論と統計学
  • 150:量子力学再入門: ヒルベルト空間法
  • 152:エルミート行列のスペクトラル分解:量子力学再入門
  • 154:スピン:量子力学再入門
  • 156:ハミルトニアンの量子化:量子力学速習
  • 158:同時測定と可換条件:量子力学再入門
  • 160:ド・ブロイのパラドックス:量子力学再入門
  • 162:EPRパラドックス:量子力学再考
  • 164ベルの不等式:量子力学再考
  • 166:[人気No.4]ハイゼンベルグの不確定性原理はキャッチコピー
  • 168:EPRパラドックスの結末
  • 170:ハイゼンベルグの不確定性原理とEPRパラドックスは矛盾?
  • 174:[人気No.2]射影仮説:波束の収縮
  • 176:量子デコヒーレンス
  • 178:ハイゼンベルグ描像
  • 180:正準交換関係の不確定性関係
  • 182:行列のトレース
  • 184:ベルトランの逆説
  • 190:全射・単射・全単射
  • 192:」単射(順列)・全単射(スターリング数)
  • 500:量子言語入門(大学院講義ノート)