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3(中):論理実証主義と形而上学


ガウスが、非ユークリッド幾何学を発見したにもかかわらず発表を躊躇たのは、カント学派との摩擦を避けるためだった。 という話を聞いたことがある。 真偽のほどは不明だが、こういう話が出るほどに当時のカント学派(二元論的観念論という形而上学)の勢いが絶大だったことは事実だろう。

形而上学の権威の失墜(科学の力)

さて、産業革命、熱力学、電磁気学、相対性理論、量子力学等を通して、20世紀初頭には、
  • 科学という権力者

が台頭した。 そうならば、

(E):  時の権力・権威者(=科学)の考えの理論的バックボーンたるべく学問

を目指した哲学が出現したとしてもおかしくない。
これが、
  • 1929年のウィーン学団(=論理実証主義)の旗揚げ

と考える。論理実証主義の主張は明確ではないが、
  • 「神、観念、精神」等の代わりに「科学、論理、実験」等をキーワードとした哲学

である。 
そして、論理実証主義は形而上学の命題は検証可能性をもたない擬似命題とした。すなわち、

(F):  論理実証主義は、形而上学撲滅運動

で、 この結果、「形而上学」は現代哲学の中で表立っては使用を憚られる一種の「さげすみの言葉」となってしまって、 この風潮は現代まで続いている。

形而上学を全面に押し出す大陸哲学(ハイデガー等)の潮流があったとしても、
  • 論理実証主義(=分析哲学) vs. 大陸哲学

の構図において、形而上学に対する信頼は衰退の一途を辿ったと言わざるを得ない。 大陸哲学の形而上学は、「計算可能な形式を持たない形而上学」だったからである。 

要するに、
  • 20世紀は、形而上学の権威が地に落ちて、形而下学(=物理学)の時代  

だった。

しかしながら、
  • 論理実証主義(とそれに続く科学哲学)は、成功しているとは、未だ一般に認めれていない

と思う。

以上の議論から、次の問題提起を得る:
(G):キリスト教無しの論理実証主義(とそれに続く科学哲学)は、果たして成功するか?
である。
実は、この問題はかなり深い。 この解答は、「量子言語」であるが、このことの説明はこのブログ全体を通して行なうことである。


という流れであるが、一番重要なことを論理実証主義は見逃したと思う。 それは、
  • 20世紀最大の科学的発見は、(形而下学である)相対性理論(形而上学である)統計学であるという認識

である。 そして、統計学の過小評価は今も続いている。 特に、「金儲け(資本主義:真偽という単純な尺度では測れない世界)」と無縁な分野(たとえば、哲学とか数学とかで、真偽という単純な尺度が支配的な分野)では、統計学の過小評価は今も続いている。 この続きは、このページの最下段を見よ


諺という形而上学
「形而上学の権威の失墜」という状況の中で、このブログでは、
  • 形而上学の復権を目指す  

ことになる。

形而上学的命題の説明として、ことわざ「猿も木から落ちる」から始める。
現実の現象を記述したはずの文言
  • 「猿も木から落ちる」

が,現実から遊離して言語化(ことわざ化・呪文化・言霊化,幽体離脱)して,ことわざの
  • 「猿も木から落ちる」

が出来上がる.

つまり、

ことわざ化・呪文化:


「世界が先、言葉が後」の精神
猿も木から落ちる
(実際の現象を記述した文言) 
呪文化

諺化
「言葉が先、世界が後」の精神
猿も木から落ちる
(実際の現象から遊離した文言)

のように,ことわざ化すると,

    「世界」と「言葉」の順序が逆転して 、 

「猿」でなくても,「木」でなくても「落ち」なくても,すなわち,まったく別の世界に適用可能になる.すなわち、
  • 「ことわざ化」すると適用範囲が飛躍的に拡大する
のです。


たとえば、「弘法も筆の誤り」で、
  •  「猿」が「弘法太子」にもなりえる 



もちろん、
  • 諺の鼎は、「実験検証」ではなくて「使い出」である。




ところで、「なぜ、突然、諺なのか?」ですが、実は、本書のテーマは、
  • 量子力学のことわざ化

すなわち、

「世界が先、言葉が後」の精神
量子力学
(実際の現象を記述した文言) 
呪文化

諺化
「言葉が先、世界が後」の精神
測定理論(量子言語)
 (実際の現象から遊離した文言)


だからで、測定理論(=量子言語)は量子力学のことわざ化(言語化,物理法則の形骸化,道具主義化,幽体離脱)と言ってもよい.

量子力学はミクロな世界の物理学であるが、ことわざ化して量子言語となると、
  • 適用範囲が飛躍的に拡大して、ミクロな現象だけではなくて、日常的な現象も記述できるようになる
のです。

しかも、

  • 量子力学(シュレーディンガー方程式等)を知らなくても、「量子言語(=量子力学のことわざ化)」は使える

のです。 弘法太子に関する詳細な知識を持ち合わせていなくても、「弘法も筆の誤り」という諺は使えるのと同じです。
-------------------------
確かに、諺の実験検証なんて、冗談でもしませんよね。  諺の「猿も木から落ちる」って、形而上学的命題なんですね。
(H)
なぜ、ことわざが成立するのでしょうか?

この問には、
  • 人間の言語能力の驚異

同じことで、
  • 「言語ゲーム」の不思議

と済ましていて、これ以上この問題(形而下学の問題)を追究していません。 『哲学探究』を中心とする後期哲学で、「言語ゲーム」という言葉を提唱したウィトゲンシュタインだって、結局は、
  • 「不思議」、「不思議」、「不思議」、「不思議」、「不思議」、・・・

と言ってるだけですけど、 ウィトゲンシュタインは哲学がわかっていた。 問い掛け(H)は哲学の問題でないのだから、脳科学や認知科学や人工知能の研究者に任せれば良いというわけです。 
  • 「答えないことが最良の答え」というわけです。

脳科学志向は、ヒューム以来の伝統かもしれないが、「これが哲学ではない」ことがわかっていない哲学愛好者が意外と多くいる。 クオリアが哲学的テーマだと信じている哲学愛好者とか。
ウィトゲンシュタインは哲学がわかっていたにしても、たぶん、科学をわかっていなかったと思う。 なぜならば、
  • ウィトゲンシュタイン のすべきことは、「(科学)言語」を作ることだったはずなのに、それをしなかった

からである。 
そうだとしても、この時代に、「科学をわかる」ことは容易なことはなかった。 アインシュタインだって、物理学はわかっていたかもしれないが、科学をわかっていなかったと思うからである。 多分、誰もわかっていなかったと思う。 アポロの月面着陸(1969年)のときには、誰もがなんとなくわかっていたはずと思う。 アポロの歴史的意義は、計り知れない:
(I):
$$
\mbox{アポロの意義} \quad \Longrightarrow \quad \begin{cases} \mbox{資本主義の勝利} \\ \\
\underset{\mbox{(すなわち、 工学の勝利)}}{\mbox{カルマンフィルター(=統計学)の勝利}}
\end{cases}
$$
だからである。

科学哲学(二元論的観念論)

量子言語(=測定理論)は、統計学と量子論を合わせた程度の強力な記述力を有する言語である。 量子言語の習得には、いろいろなアプローチの方法があっていい。 このブログでは、数物には関わらず、哲学【二元論的観念論】をメインに量子言語を紹介して、西洋哲学史の本流は常に量子言語に向かって進歩してきたことを確認する。ブログとは、一旦書いてしまうと、訂正するのが億劫になるものである。 したがって、本ブログと大幅な変更があるわけではないが、現時点での正式バージョンは【Western philosophy(PDF)】を見よ。

目次

  • 0:【Home】リンク付き目次(スマホ利用者用)
  • 1:量子力学の観測・解釈問題の解決
  • 2(上):科学哲学とは? (形而上学;統計学;量子力学)
  • 2(下):世界記述(至上)主義
  • 3(上):1+1=2:発明王エジソン;形而上学
  • 3(中):論理実証主義と形而上学
  • 3(下):ケルヴィン卿の形而上学
  • 4(上): 測定理論(=量子言語); 世界記述法の分類
  • 4(中):ソーカル事件の「脱構築」
  • 4(下)論考、知の欺瞞、量子言語
  • 5:古典力学的世界観;量子力学的世界観
  • 6:科学と統計学;量子言語;
  • 7:赤い糸 : 量子力学の観測と因果関係
  • 8:運命の量子的出会い(観測と因果律)
  • 9:コペンハーゲン解釈は虚構;因果と測定
  • 10: $[$一元論、二元論$]$×$[$実在論、観念論$]$
  • 11:離別の予感(測定と因果)
  • 12:ピタゴラス(万物は数)
  • 13:パルメニデスとヘラクレイトス;運動・変化
  • 14: 科学とは何か? 運動;因果律;確率;測定
  • 15:パルメニデスの理屈っぽさ: ゼノンのパラドックス
  • 16(上):ゼノンのパラドックスは未解決問題
  • 16(補): ハジキの公式:形而上学的命題
  • 16(中):「アキレスと亀」は未解決問題
  • 16(下): ゼノンのパラドックスの必然性
  • 17(上):存在論(パルメニデス)
  • 17(下):存在とは何か?(パルメニデス)
  • 18(上):[人気No.3]哲学は進歩したか?
  • 18:無知の知:ソクラテスの詭弁
  • 19:人間は万物の尺度:プロタゴラス×ソクラテス;倫理哲学
  • 20:イデア論:プラトンの詭弁
  • 21(上):プラトンのイデアは絶対基準・測定器のこと
  • 21(下): 西洋哲学はプラトンの脚注
  • 22(上):万学の祖アリストテレス;形相,質料
  • 22(下): プラトンとアリストテレスの融合;スコラ哲学
  • 23(上):アリストテレスの目的因
  • 23(下):三段論法を信じますか? アリストテレス
  • 23(補):必要条件と十分条件
  • 24(上):アリスタルコス(古代の地動説);アルキメデス
  • 24(下):アリスタルコス:古代の地動説
  • 25(上):ユークリッド幾何学--平行線の公準
  • 25(下):言語と数学;公理主義
  • 26:エラトステネス:古代最大の測定者
  • 27:総括〈ギリシャ vs.アレクサンドリア〉
  • 28:天動説(プトレマイオス)
  • 29:古代科学の三つの集大成
  • 30:アウグスティヌスとプラトン哲学
  • 31:アウグスティヌスと時間論;告白
  • 32:十字軍:イスラム文化(アリストテレス)の流入
  • 32.5: 位取り記数法(アラビア数字;ゼロの発見)
  • 33:神の存在証明(アンセルムス);スコラ哲学
  • 34:普遍論争と「存在・実在」;スコラ哲学
  • 36:[人気No.5]オッカムの剃刀(節約の原理)
  • 37:パラダイムシフト;コペルニクスとニュートン
  • 37(中):プラトンとアリストテレス;アテナイの学堂
  • 37(下):帰納主義;イドラ;ベーコン;経験論の祖
  • 38:天動説から地動説へ
  • 39:地動説・天動説とは、何か?
  • 40:ガリレオと地動説;ピサの斜塔;裁判
  • 41:ガリレオからニュートンへ
  • 42:プリンキピアと地動説
  • 43:因果関係とは何か?
  • 44:実在的因果関係(物理学)
  • 45:認識的因果関係(ヒューム・カント)
  • 46:数学的因果関係(ピタゴラス教団)
  • 47:言語的因果関係
  • 48:我思う、 ゆえに我在り(方法序説:デカルト)
  • 49:コギト命題からデカルト図式へ
  • 49下:物心二元論・心身二元論
  • 50:オカルト図式?
  • 52:中二病(デカルトの懐疑)
  • 53:世界記述と非ユークリッド的転回
  • 54:二元論・観念論に対する誤解
  • 56:ジョン・ロック$[$人間知性論$]$タブラ・ラーサ
  • 57:イギリス経験論の祖:ジョン・ロック;第ニ次性質
  • 58:大陸合理主義:ライプニッツ; 生得説
  • 59(上):日常言語はイギリス経験論的
  • 59(下):量子言語はカント哲学的
  • 60:唯心論:バークリー;存在するとは知覚されること
  • 61:懐疑主義:ヒューム
  • 62:実在的世界記述法と言語的世界記述法
  • 63:量子力学の道具主義化
  • 64:ライプニッツ・クラーク論争; 時空とは何か?
  • 65:コペンハーゲン解釈
  • 66:原点回帰:再びパルメニデスへ
  • 67:マクタガートのパラドックス:時間論:時制
  • 68:アウグスティヌスの時間論:主観的時間
  • 70:カント:二律背反(アンチノミー)
  • 71:「我思う、ゆえに我あり」を疑う
  • 72:カントの物自体; 模写説から構成説
  • 73:コペルニクス的転回;純粋理性批判
  • 74:純粋理性批判; アプリオリな総合判断;超越論的観念論
  • 78:カント登場の必然性
  • 78(補): 功利主義;ベンサム;最大多数の最大幸福
  • 79(上): ラプラスの魔:ゼノンのパラドックス
  • 79(下): ホーキング博士の哲学批判
  • 80:カントール:集合論
  • 80(下):空集合と選択公理
  • 81:数理論理学:数学のような、哲学のような
  • 82:弁証法という諺:ヘーゲル
  • 825: プラグマティズム(実用主義)のジレンマ
  • 83:論理哲学論考;ウィトゲンシュタイン
  • 84:言語論的転回;言語哲学
  • 86: 量子力学の解釈とは何か?
  • 88:量子言語の記述力;言語ゲーム;語りえぬもの;ウィトゲンシュタイン
  • 88.5:[人気No.1]心身問題の解決
  • 89: ボーア × アインシュタインの量子力学論争
  • 90: 二つの量子力学
  • 91: 数学の三大発見
  • 92: フォン・ノイマン;量子力学
  • 93: アリストテレス、ライプニッツ、フォン・ノイマン
  • 94: 確率の歴史
  • 95:確率の哲学: 確率とは何か?
  • 96: 確率論 vs. 量子言語
  • 97: 確率論: 二元論の消去
  • 98: 主観的時間; 科学哲学論争
  • 99: フィッシャーの最尤法
  • 100: 科学哲学の大きな物語の終焉
  • 補101:測定・推定・制御の科学哲学
  • 補102:ベイズ統計・ベイズの定理
  • 補103: 確率論と統計学
  • 150:量子力学再入門: ヒルベルト空間法
  • 152:エルミート行列のスペクトラル分解:量子力学再入門
  • 154:スピン:量子力学再入門
  • 156:ハミルトニアンの量子化:量子力学速習
  • 158:同時測定と可換条件:量子力学再入門
  • 160:ド・ブロイのパラドックス:量子力学再入門
  • 162:EPRパラドックス:量子力学再考
  • 164ベルの不等式:量子力学再考
  • 166:[人気No.4]ハイゼンベルグの不確定性原理はキャッチコピー
  • 168:EPRパラドックスの結末
  • 170:ハイゼンベルグの不確定性原理とEPRパラドックスは矛盾?
  • 174:[人気No.2]射影仮説:波束の収縮
  • 176:量子デコヒーレンス
  • 178:ハイゼンベルグ描像
  • 180:正準交換関係の不確定性関係
  • 182:行列のトレース
  • 184:ベルトランの逆説
  • 190:全射・単射・全単射
  • 192:」単射(順列)・全単射(スターリング数)
  • 500:量子言語入門(大学院講義ノート)