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18:無知の知 ( I know I know nothing ) :ソクラテスの詭弁

世界記述の哲学とは、


(A): 如何に世界を記述するか?、 世界を記述する言語は如何なるものか? 


を問題にする。 科学を作る(=世界記述の)ために、ピタゴラスは「数」に、 ヘラクレイトス、パルメニデスとゼノンは「運動・変化」に注目した。

しかし、世界記述(=科学哲学)とは別の哲学(倫理哲学)もある。

倫理哲学

理系の多くが(否、文系さえも)、倫理哲学は「口だけ(=弁論術)」と思っているかもしれない。事実、ソフィストたちはそう主張していた。 ソフィストの祖プロタゴラス(前490ころ~前420ころ)は、「人間は万物の尺度である」と説き、各人の主観的判断以外に真理はないとする相対主義を主張した。資本主義の常識は

    • 主観的価値の総和=お金

    だから、ソフィストの主張は合理的で、現代の常識と言える。


    しかし、これに真っ向から異論を唱えたのがソクラテス(BC.469年頃 - BC.399年)で、


    (B): 「善く生きる」とか「如何に生きるか?」

    を問うて、 このために、

    (C): 「善」、「幸福」、「徳」、「正義」、「勇気」、「愛」・・・ 

    等のことばの意味を明確にして、これらが哲学のテーマに成り得ることを示した。 結局、ソクラテスは、
    • 相対主義(合理的なソフィスト) vs. 絶対主義(信念の人ソクラテス)

    の問題提起をしたことになる。

    --------------------------------
    ソクラテス(BC.469―BC.399), 孔子(BC.551―BC.479), 釈迦 BC.565―BC.486) は同時代の哲人で、問題(B)を追究した。
    当然のことであるが、 
    (D):
    上の(C)で述べたような言葉が普及しなかったら、人類は滅亡していたかもしれない

    (すくなくとも、「人間社会」を形成できなかった)と容易に想像できるのだから、倫理哲学の重要さはわかると思う。



  • したがって、「ソフィストたちとソクラテスの問答」は、下のように哲学の領域を倍増させたことになる。

    • $\small 哲学
      \begin{cases}
      \color{blue}{(A):世界記述の哲学}
      \\
      \quad パルメニデス、ヘラクレイトス
      \\
      \\
      \color{red}{(B):倫理哲学} \qquad
      \\
      \quad プロタゴラス、ソクラテス
      \end{cases}$

    当然のことですが、
    • (A)と(B)は無関係 

    です。
    しかし、
    • 「(A)と(B)を(意図的に?)混同させて、哲学を発展させる」というアイデアに気付いたのが、ソクラテスの弟子プラトンなのです

    この続きは明日ですね。

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    ソクラテスは書いたものを残していません。 「ソフィスト vs. ソクラテス」の物語は、ソクラテスの弟子のプラトンの創作なので、公平とは言えないかもしれません。 たとえば、

    無敵の論法「無知の知

    ソフィスト: ・・・何かを主張する・・・
    ソクラテス: 「それは違う」と否定する。
    ソフィストソクラテス: ・・・暫し問答・・・雄弁に語るソフィスト
    ソクラテス: どうやら君の無知が露になったようですね。 [I know I know nothing」だよ。 私は自分が無知であることを既に知っていて、君は自分の無知を自覚していないので、私の方が偉いようだね。


    という無敵の論法が「無知の知」ですか? プラトン著の「ソクラテスを主人公とする小説」を定説に囚われずに読めば、
    • 「詭弁を弄しているのは、ソフィストよりもむしろソクラテスの方」

    と読めないこともないと思うのですが。 それはそうでしょう。 どや顔で、[I know I know nothing」 などと自己言及的矛盾命題を言われたら、ソフィスト達もあきれて、 「この人と議論しても無駄」と思うしかないでしょう。
    しかし、 今さらですが、

    (E):ソクラテスは、「無知の知」などと言わないで、「上の(D)で述べたような『人類の存亡』に関わるような重要な言葉」について議論していると言ってもらいたかった

    と思うのは浅はかである。  自己言及的命題の言葉遊びが西洋哲学の主流になるのだから。 たとえば、
    デカルトが言ったことは、

    「我思う、故に我在り」と我思う

    なのだから、

    東洋での禅問答も言葉遊びの一種であるが、西洋哲学では言葉遊びを本気で追究してしまったわけだが、それなりの効果があったことをこのブログではこれから説明して行く。





    科学哲学(二元論的観念論)

    量子言語(=測定理論)は、統計学と量子論を合わせた程度の強力な記述力を有する言語である。 量子言語の習得には、いろいろなアプローチの方法があっていい。 このブログでは、数物には関わらず、哲学【二元論的観念論】をメインに量子言語を紹介して、西洋哲学史の本流は常に量子言語に向かって進歩してきたことを確認する。ブログとは、一旦書いてしまうと、訂正するのが億劫になるものである。 したがって、本ブログと大幅な変更があるわけではないが、現時点での正式バージョンは【Western philosophy(PDF)】を見よ。

    目次

  • 0:【Home】リンク付き目次(スマホ利用者用)
  • 1:量子力学の観測・解釈問題の解決
  • 2(上):科学哲学とは? (形而上学;統計学;量子力学)
  • 2(下):世界記述(至上)主義
  • 3(上):1+1=2:発明王エジソン;形而上学
  • 3(中):論理実証主義と形而上学
  • 3(下):ケルヴィン卿の形而上学
  • 4(上): 測定理論(=量子言語); 世界記述法の分類
  • 4(中):ソーカル事件の「脱構築」
  • 4(下)論考、知の欺瞞、量子言語
  • 5:古典力学的世界観;量子力学的世界観
  • 6:科学と統計学;量子言語;
  • 7:赤い糸 : 量子力学の観測と因果関係
  • 8:運命の量子的出会い(観測と因果律)
  • 9:コペンハーゲン解釈は虚構;因果と測定
  • 10: $[$一元論、二元論$]$×$[$実在論、観念論$]$
  • 11:離別の予感(測定と因果)
  • 12:ピタゴラス(万物は数)
  • 13:パルメニデスとヘラクレイトス;運動・変化
  • 14: 科学とは何か? 運動;因果律;確率;測定
  • 15:パルメニデスの理屈っぽさ: ゼノンのパラドックス
  • 16(上):ゼノンのパラドックスは未解決問題
  • 16(補): ハジキの公式:形而上学的命題
  • 16(中):「アキレスと亀」は未解決問題
  • 16(下): ゼノンのパラドックスの必然性
  • 17(上):存在論(パルメニデス)
  • 17(下):存在とは何か?(パルメニデス)
  • 18(上):[人気No.3]哲学は進歩したか?
  • 18:無知の知:ソクラテスの詭弁
  • 19:人間は万物の尺度:プロタゴラス×ソクラテス;倫理哲学
  • 20:イデア論:プラトンの詭弁
  • 21(上):プラトンのイデアは絶対基準・測定器のこと
  • 21(下): 西洋哲学はプラトンの脚注
  • 22(上):万学の祖アリストテレス;形相,質料
  • 22(下): プラトンとアリストテレスの融合;スコラ哲学
  • 23(上):アリストテレスの目的因
  • 23(下):三段論法を信じますか? アリストテレス
  • 23(補):必要条件と十分条件
  • 24(上):アリスタルコス(古代の地動説);アルキメデス
  • 24(下):アリスタルコス:古代の地動説
  • 25(上):ユークリッド幾何学--平行線の公準
  • 25(下):言語と数学;公理主義
  • 26:エラトステネス:古代最大の測定者
  • 27:総括〈ギリシャ vs.アレクサンドリア〉
  • 28:天動説(プトレマイオス)
  • 29:古代科学の三つの集大成
  • 30:アウグスティヌスとプラトン哲学
  • 31:アウグスティヌスと時間論;告白
  • 32:十字軍:イスラム文化(アリストテレス)の流入
  • 32.5: 位取り記数法(アラビア数字;ゼロの発見)
  • 33:神の存在証明(アンセルムス);スコラ哲学
  • 34:普遍論争と「存在・実在」;スコラ哲学
  • 36:[人気No.5]オッカムの剃刀(節約の原理)
  • 37:パラダイムシフト;コペルニクスとニュートン
  • 37(中):プラトンとアリストテレス;アテナイの学堂
  • 37(下):帰納主義;イドラ;ベーコン;経験論の祖
  • 38:天動説から地動説へ
  • 39:地動説・天動説とは、何か?
  • 40:ガリレオと地動説;ピサの斜塔;裁判
  • 41:ガリレオからニュートンへ
  • 42:プリンキピアと地動説
  • 43:因果関係とは何か?
  • 44:実在的因果関係(物理学)
  • 45:認識的因果関係(ヒューム・カント)
  • 46:数学的因果関係(ピタゴラス教団)
  • 47:言語的因果関係
  • 48:我思う、 ゆえに我在り(方法序説:デカルト)
  • 49:コギト命題からデカルト図式へ
  • 49下:物心二元論・心身二元論
  • 50:オカルト図式?
  • 52:中二病(デカルトの懐疑)
  • 53:世界記述と非ユークリッド的転回
  • 54:二元論・観念論に対する誤解
  • 56:ジョン・ロック$[$人間知性論$]$タブラ・ラーサ
  • 57:イギリス経験論の祖:ジョン・ロック;第ニ次性質
  • 58:大陸合理主義:ライプニッツ; 生得説
  • 59(上):日常言語はイギリス経験論的
  • 59(下):量子言語はカント哲学的
  • 60:唯心論:バークリー;存在するとは知覚されること
  • 61:懐疑主義:ヒューム
  • 62:実在的世界記述法と言語的世界記述法
  • 63:量子力学の道具主義化
  • 64:ライプニッツ・クラーク論争; 時空とは何か?
  • 65:コペンハーゲン解釈
  • 66:原点回帰:再びパルメニデスへ
  • 67:マクタガートのパラドックス:時間論:時制
  • 68:アウグスティヌスの時間論:主観的時間
  • 70:カント:二律背反(アンチノミー)
  • 71:「我思う、ゆえに我あり」を疑う
  • 72:カントの物自体; 模写説から構成説
  • 73:コペルニクス的転回;純粋理性批判
  • 74:純粋理性批判; アプリオリな総合判断;超越論的観念論
  • 78:カント登場の必然性
  • 78(補): 功利主義;ベンサム;最大多数の最大幸福
  • 79(上): ラプラスの魔:ゼノンのパラドックス
  • 79(下): ホーキング博士の哲学批判
  • 80:カントール:集合論
  • 80(下):空集合と選択公理
  • 81:数理論理学:数学のような、哲学のような
  • 82:弁証法という諺:ヘーゲル
  • 825: プラグマティズム(実用主義)のジレンマ
  • 83:論理哲学論考;ウィトゲンシュタイン
  • 84:言語論的転回;言語哲学
  • 86: 量子力学の解釈とは何か?
  • 88:量子言語の記述力;言語ゲーム;語りえぬもの;ウィトゲンシュタイン
  • 88.5:[人気No.1]心身問題の解決
  • 89: ボーア × アインシュタインの量子力学論争
  • 90: 二つの量子力学
  • 91: 数学の三大発見
  • 92: フォン・ノイマン;量子力学
  • 93: アリストテレス、ライプニッツ、フォン・ノイマン
  • 94: 確率の歴史
  • 95:確率の哲学: 確率とは何か?
  • 96: 確率論 vs. 量子言語
  • 97: 確率論: 二元論の消去
  • 98: 主観的時間; 科学哲学論争
  • 99: フィッシャーの最尤法
  • 100: 科学哲学の大きな物語の終焉
  • 補101:測定・推定・制御の科学哲学
  • 補102:ベイズ統計・ベイズの定理
  • 補103: 確率論と統計学
  • 150:量子力学再入門: ヒルベルト空間法
  • 152:エルミート行列のスペクトラル分解:量子力学再入門
  • 154:スピン:量子力学再入門
  • 156:ハミルトニアンの量子化:量子力学速習
  • 158:同時測定と可換条件:量子力学再入門
  • 160:ド・ブロイのパラドックス:量子力学再入門
  • 162:EPRパラドックス:量子力学再考
  • 164ベルの不等式:量子力学再考
  • 166:[人気No.4]ハイゼンベルグの不確定性原理はキャッチコピー
  • 168:EPRパラドックスの結末
  • 170:ハイゼンベルグの不確定性原理とEPRパラドックスは矛盾?
  • 174:[人気No.2]射影仮説:波束の収縮
  • 176:量子デコヒーレンス
  • 178:ハイゼンベルグ描像
  • 180:正準交換関係の不確定性関係
  • 182:行列のトレース
  • 184:ベルトランの逆説
  • 190:全射・単射・全単射
  • 192:」単射(順列)・全単射(スターリング数)
  • 500:量子言語入門(大学院講義ノート)