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23; 三段論法を信じますか? アリストテレス

第23(中)話
三段論法より世界記述法の方が偉い
「三段論法」として,よく引き合いに出されるのが,
次の文言である:
($\sharp_1$)
ソクラテスは人間であり,且つ,人間は死ぬ. 故に,ソクラテスは死ぬ.

しかし,アリストテレスによるとされているこの例($\sharp_1$)は,世界記述の観点からみれば,素直に受け入れることはできない.
なぜならば,

如何なる世界記述法の下で,文言($\sharp_1$)が記述されいるか?

が明示されていないからで,それならば,文言($\sharp_1$)は「科学的命題」ではなくて,「日常言語的命題」になってしまうからである.
いろいろな動物の生態を観察すれば,明らかなことであるが,言語のベースは,「威嚇・連帯・生殖」を起源とするはずで,言語は,人類が「明日まで命を繋ぐ」ために必死に考え出した
  • 生存・繁殖のための最強の武器
であった.
そういう時代が,何百万年も続いたのだと思う.もちろん,その間に,原始的な言語が,
「リズム,歌」,「論理構造」,「数量概念」,「文法」,「時制」,「文字」、「人称」等、

を獲得して現代の日常言語に形成されてきたのだと思う。
そうだとしても、日常言語の中に論理構造を見つけた驚きの象徴が、「アリストテレスの三段論法」として言い伝えられているのかもしれない。しかし,ここでは,日常言語で表現された文言($\sharp_1$)を量子言語で記述することを考える.




ここまでも随所で述べたように、本ブログ全体を通して一貫した信念は、「初めに、世界記述法(言語体系)ありき」で、以下に復習しておく。

世界記述(至上)主義
第2話「世界記述主義」参照)、 (第16(上)話「ゼノンのパラドックス」参照)


(A):世界記述主義


世界記述法から始めよ(=初めに、世界記述法ありき)
すなわち、
世界記述法(=言語体系)を先に宣言して、その下で、諸性質(「存在(=キーワード)」や「論理(=計算)」や「運動」等)を議論せよ。


たとえば、 以前に述べたように、ゼノンのパラドックスは世界記述至上主義の必然性を示唆している。 すなわち、
  • 世界記述法(たとえば、ニュートン力学、相対性理論、量子言語等)を決めてから、ゼノンのパラドックスを議論しなければ解答とは言えない。 日常言語内の議論は「ゼノンのパラドックス」を導く。

世界記述至上主義は、「運動」だけではなくて、「論理」に対しても不可欠である。 すなわち、

(B): 世界記述法(言語体系)が定まれば、自然に(オートマティックに)論理が定まる
逆も言えて、世界記述法(言語体系)が定まらなければ、論理が定まらない。 つまり、 論理より世界記述法の方が偉い。


である。この意味では、「言語=論理」と言っても過言でない。 そうならば、ギリシャ語の「ロゴス」は、「言語」と「論理」の両方の意味があるのもうなづける。「言語=論理」とは言っても、厳密に言えば、言語(=世界記述法)の方が論理より偉い

以上の準備の下に、「三段論法」につて議論しよう。 すなわち、
  • ある世界記述法では、三段論法が成立するが、別の世界記述法では三段論法が成立しない

ことを示そう。
四つの三段論法

誰が三段論法の発見者か、は知らない。 数学(or 数理論理)の中ではいつも頻出なのだから、当然ピタゴラスは知っていたにちがいない。知っていたというよりも身についていたと言っていいだろう。
すなわち、

①: 数学という言語体系の下の三段論法


  • 「A ⇒ B」 かつ 「B ⇒ C」

    「A ⇒ C」


である。
上の①は、数学で、「そういうルール」を仮定したのだから、それで納得すればよい。


日常言語の中での「三段論法」は、「アリストテレスの三段論法(or, 単に「三段論法」」と呼ばれて、以下の通りである。

②: アリストテレスの三段論法(日常言語内の三段論法)


  • 「ソクラテスは人間である」かつ 「すべての人間は死ぬ」
    ならば
    「ソクラテスは死ぬ」

これは保証されているわけではない。 裁判所の論理は、これなので信用してよい。




上の①は、数学で、「そういうルール」を仮定したのだから、それで良い。 しかし、②は自明とはいえない。 なぜならば、
  • ②では、世界記述法(=言語体系)が明示されていない。 日常言語内での論理がいかに信用できないか、はゼノンのパラドックスのところで何度も述べた。

からである。 すなわち、数学的三段論法①がこの世界に適用できるかどうかは自明とはいえないからである。 


ただし、 次は証明できる
  • 量子言語の適用範囲を古典系に限定すれば、 三段論法は成立する

である。
すなわち、

③:量子言語の適用範囲を古典系に限定すれば、 三段論法は成立する。 すなわち、次は正しい:


  • 「ソクラテスは人間である」かつ 「すべての人間は死ぬ」
    ならば
    「ソクラテスは死ぬ」




そうなると、量子系の場合が気になるかもしれないが、事実、次が言える:

④: 量子力学という言語体系の下の三段論法


  • 量子の世界では、三段論法は成立しない



アリストテレスの三段論法②は、「日常言語という言語体系」の下に主張されていると考えることは普通かもしれない。 しかし、 そうだとしたら、「日常言語という言語体系」は明確ではないのだから、ゼノンのパラドックスで騙されたように、アリストテレスの三段論法②はマルチ商法にも悪用できる。こうなると、「アリストテレスの三段論法②」も疑うべきであるが、「量子言語の適用範囲を古典系に限定したときの三段論法」と思うえばよいのかもしれない。

理系ならば、日常言語の会話のなかで次の言葉が使えない:
  • 「論理的」、「100%安全」、「証明」

と思うが、「アリストテレスの三段論法②」すら疑う余地があるならば、「論理的」、「100%安全」、「証明」など迂闊に使えないと律儀に考えてしまうからだろう。


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EPR(Einstein‐Podolsky‐Rosen paradox:1936年,)のパラドックスを使えば、
  • 量子力学では「アリストテレスの三段論法」は成立しない

が証明できる((第8章:実践論理: ソクラテスは死ぬか?)参照)。
すなわち、ソクラテスが量子的に小さければ、「アリストテレスの三段論法②」は成立しない、ですね。 言われてみれば当たり前のことで、繰り返しになりますが、

  • 数学の三段論法は単なるルールで、これがこの世界に適用可能であることは保証されていない。

からです。アリストテレスに対抗できるのは、アインシュタインぐらいしかいないということですね。 

しかし、
  • 「ゼノンのパラドックス」や「アリストテレスの三段論法」が、 なぜこんなに有名なのだろうか? なぜ繰り返し議論されているのだろうか?
を問うならば、 やはり、 そこに「何かしっくりしないもの(すなわち、上の世界記述法至上主義(A)の無視)」を一般の哲学者がなんとなく感じとって、この感覚が2000年以上も伝達されていると考えるのは穿ちすぎだろうか


科学哲学(二元論的観念論)

量子言語(=測定理論)は、統計学と量子論を合わせた程度の強力な記述力を有する言語である。 量子言語の習得には、いろいろなアプローチの方法があっていい。 このブログでは、数物には関わらず、哲学【二元論的観念論】をメインに量子言語を紹介して、西洋哲学史の本流は常に量子言語に向かって進歩してきたことを確認する。ブログとは、一旦書いてしまうと、訂正するのが億劫になるものである。 したがって、本ブログと大幅な変更があるわけではないが、現時点での正式バージョンは【Western philosophy(PDF)】を見よ。

目次

  • 0:【Home】リンク付き目次(スマホ利用者用)
  • 1:量子力学の観測・解釈問題の解決
  • 2(上):科学哲学とは? (形而上学;統計学;量子力学)
  • 2(下):世界記述(至上)主義
  • 3(上):1+1=2:発明王エジソン;形而上学
  • 3(中):論理実証主義と形而上学
  • 3(下):ケルヴィン卿の形而上学
  • 4(上): 測定理論(=量子言語); 世界記述法の分類
  • 4(中):ソーカル事件の「脱構築」
  • 4(下)論考、知の欺瞞、量子言語
  • 5:古典力学的世界観;量子力学的世界観
  • 6:科学と統計学;量子言語;
  • 7:赤い糸 : 量子力学の観測と因果関係
  • 8:運命の量子的出会い(観測と因果律)
  • 9:コペンハーゲン解釈は虚構;因果と測定
  • 10: $[$一元論、二元論$]$×$[$実在論、観念論$]$
  • 11:離別の予感(測定と因果)
  • 12:ピタゴラス(万物は数)
  • 13:パルメニデスとヘラクレイトス;運動・変化
  • 14: 科学とは何か? 運動;因果律;確率;測定
  • 15:パルメニデスの理屈っぽさ: ゼノンのパラドックス
  • 16(上):ゼノンのパラドックスは未解決問題
  • 16(補): ハジキの公式:形而上学的命題
  • 16(中):「アキレスと亀」は未解決問題
  • 16(下): ゼノンのパラドックスの必然性
  • 17(上):存在論(パルメニデス)
  • 17(下):存在とは何か?(パルメニデス)
  • 18(上):[人気No.3]哲学は進歩したか?
  • 18:無知の知:ソクラテスの詭弁
  • 19:人間は万物の尺度:プロタゴラス×ソクラテス;倫理哲学
  • 20:イデア論:プラトンの詭弁
  • 21(上):プラトンのイデアは絶対基準・測定器のこと
  • 21(下): 西洋哲学はプラトンの脚注
  • 22(上):万学の祖アリストテレス;形相,質料
  • 22(下): プラトンとアリストテレスの融合;スコラ哲学
  • 23(上):アリストテレスの目的因
  • 23(下):三段論法を信じますか? アリストテレス
  • 23(補):必要条件と十分条件
  • 24(上):アリスタルコス(古代の地動説);アルキメデス
  • 24(下):アリスタルコス:古代の地動説
  • 25(上):ユークリッド幾何学--平行線の公準
  • 25(下):言語と数学;公理主義
  • 26:エラトステネス:古代最大の測定者
  • 27:総括〈ギリシャ vs.アレクサンドリア〉
  • 28:天動説(プトレマイオス)
  • 29:古代科学の三つの集大成
  • 30:アウグスティヌスとプラトン哲学
  • 31:アウグスティヌスと時間論;告白
  • 32:十字軍:イスラム文化(アリストテレス)の流入
  • 32.5: 位取り記数法(アラビア数字;ゼロの発見)
  • 33:神の存在証明(アンセルムス);スコラ哲学
  • 34:普遍論争と「存在・実在」;スコラ哲学
  • 36:[人気No.5]オッカムの剃刀(節約の原理)
  • 37:パラダイムシフト;コペルニクスとニュートン
  • 37(中):プラトンとアリストテレス;アテナイの学堂
  • 37(下):帰納主義;イドラ;ベーコン;経験論の祖
  • 38:天動説から地動説へ
  • 39:地動説・天動説とは、何か?
  • 40:ガリレオと地動説;ピサの斜塔;裁判
  • 41:ガリレオからニュートンへ
  • 42:プリンキピアと地動説
  • 43:因果関係とは何か?
  • 44:実在的因果関係(物理学)
  • 45:認識的因果関係(ヒューム・カント)
  • 46:数学的因果関係(ピタゴラス教団)
  • 47:言語的因果関係
  • 48:我思う、 ゆえに我在り(方法序説:デカルト)
  • 49:コギト命題からデカルト図式へ
  • 49下:物心二元論・心身二元論
  • 50:オカルト図式?
  • 52:中二病(デカルトの懐疑)
  • 53:世界記述と非ユークリッド的転回
  • 54:二元論・観念論に対する誤解
  • 56:ジョン・ロック$[$人間知性論$]$タブラ・ラーサ
  • 57:イギリス経験論の祖:ジョン・ロック;第ニ次性質
  • 58:大陸合理主義:ライプニッツ; 生得説
  • 59(上):日常言語はイギリス経験論的
  • 59(下):量子言語はカント哲学的
  • 60:唯心論:バークリー;存在するとは知覚されること
  • 61:懐疑主義:ヒューム
  • 62:実在的世界記述法と言語的世界記述法
  • 63:量子力学の道具主義化
  • 64:ライプニッツ・クラーク論争; 時空とは何か?
  • 65:コペンハーゲン解釈
  • 66:原点回帰:再びパルメニデスへ
  • 67:マクタガートのパラドックス:時間論:時制
  • 68:アウグスティヌスの時間論:主観的時間
  • 70:カント:二律背反(アンチノミー)
  • 71:「我思う、ゆえに我あり」を疑う
  • 72:カントの物自体; 模写説から構成説
  • 73:コペルニクス的転回;純粋理性批判
  • 74:純粋理性批判; アプリオリな総合判断;超越論的観念論
  • 78:カント登場の必然性
  • 78(補): 功利主義;ベンサム;最大多数の最大幸福
  • 79(上): ラプラスの魔:ゼノンのパラドックス
  • 79(下): ホーキング博士の哲学批判
  • 80:カントール:集合論
  • 80(下):空集合と選択公理
  • 81:数理論理学:数学のような、哲学のような
  • 82:弁証法という諺:ヘーゲル
  • 825: プラグマティズム(実用主義)のジレンマ
  • 83:論理哲学論考;ウィトゲンシュタイン
  • 84:言語論的転回;言語哲学
  • 86: 量子力学の解釈とは何か?
  • 88:量子言語の記述力;言語ゲーム;語りえぬもの;ウィトゲンシュタイン
  • 88.5:[人気No.1]心身問題の解決
  • 89: ボーア × アインシュタインの量子力学論争
  • 90: 二つの量子力学
  • 91: 数学の三大発見
  • 92: フォン・ノイマン;量子力学
  • 93: アリストテレス、ライプニッツ、フォン・ノイマン
  • 94: 確率の歴史
  • 95:確率の哲学: 確率とは何か?
  • 96: 確率論 vs. 量子言語
  • 97: 確率論: 二元論の消去
  • 98: 主観的時間; 科学哲学論争
  • 99: フィッシャーの最尤法
  • 100: 科学哲学の大きな物語の終焉
  • 補101:測定・推定・制御の科学哲学
  • 補102:ベイズ統計・ベイズの定理
  • 補103: 確率論と統計学
  • 150:量子力学再入門: ヒルベルト空間法
  • 152:エルミート行列のスペクトラル分解:量子力学再入門
  • 154:スピン:量子力学再入門
  • 156:ハミルトニアンの量子化:量子力学速習
  • 158:同時測定と可換条件:量子力学再入門
  • 160:ド・ブロイのパラドックス:量子力学再入門
  • 162:EPRパラドックス:量子力学再考
  • 164ベルの不等式:量子力学再考
  • 166:[人気No.4]ハイゼンベルグの不確定性原理はキャッチコピー
  • 168:EPRパラドックスの結末
  • 170:ハイゼンベルグの不確定性原理とEPRパラドックスは矛盾?
  • 174:[人気No.2]射影仮説:波束の収縮
  • 176:量子デコヒーレンス
  • 178:ハイゼンベルグ描像
  • 180:正準交換関係の不確定性関係
  • 182:行列のトレース
  • 184:ベルトランの逆説
  • 190:全射・単射・全単射
  • 192:」単射(順列)・全単射(スターリング数)
  • 500:量子言語入門(大学院講義ノート)