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31:アウグスティヌスと時間論;告白

第31話
プラトン二世
プラトン;アウグスティヌス;時間論;告白;;


カソリック最大の神父アウグスティヌス(354年-430年)は、
  • 神の知性=イデア

として、プラトン哲学をキリスト教の理論武装に使った。 そして、すべては、アウグスティヌスの計画・思惑通り進行した。

我々一般人が最も知りたいことは、

①如何に生きるべきか?

であり、キリスト教の神父たちは、神の代弁者として、これをキリストの教えとして民衆に説いた。したがって、キリスト教父たちは、神の如く、いかなる疑問にも即座に答えられる存在でなければならなかった。 その中でも、神父たちを困らせた質問は、

②世界は如何にできているのか?

と思う。「この世界は神に作られたのだとしたら、神が作る以前はどうだったのか?」等である。

『告白(著:アウグスティヌス)』の時間論


聖書では、
(A1):この世界は神によって作られた
と書いてある。 そうならば、
(A2):神が作る以前の世界はどうだったのか?
と問うかもしれない。 しかし、(A1)を信じるならば、
(A3):時間も世界が創造されたときに創造されたことになる
したがって、
(A4): 「神が作る以前」という問いかけ自体が無意味となる。
神の代弁者である偉い神父にこう言われたら、

  • なるほど、自分は聖書の読み方が甘かった。 (A2)などとつまらない質問をしてしまった
と納得してしまうのが人情というものでしょう。
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また、
(B): 真に存在するものは過去でも未来でもなく、ただ現在だけである
と言われれば、やはり納得してしまうでしょう。
たしかに、 
  • 未来は「予測」、過去は「記憶」でしかないわけで、実感できるのは「現在」しかない。
なのだから。 哲学における主要テーマ
  • 主観的時間
の嚆矢である。 しかし、この「主観的時間」が科学で使われることはないだろう。



「主観的時間」、「時制」、「測定者の時間」は文学・宗教の時間で、科学の時間でない

アウグスティヌスの「時間論」は現代にも影響を与えている。

  • ビッグバーンと(A3)を関連付けして議論できるほど、ビッグバーンについて知らない。 しかし、「(A1)-(A4)」の議論の中で、(プラトンと同様に)アウグスティヌスも
    • 信念・教義に都合がいいように、「世界はこうなっている」と勝手に宣言することが世界記述の本質である

    ことを見抜いていたと思いたい。

  • (B)の時制(過去、現在、未来)の議論は、科学の立場からは、非常に教訓的である。 第98話「主観時間」で述べることであるが、
    • 科学には時制が無い。  

    哲学者が議論を継続してきた「主観的時間」は、多分科学とは関係がない。 アウグステヌスの宗教的・日常的議論(B)を科学的議論に持ち込むことは、禁忌である。 すなわち、
    • 「時制(=測定者の時間)」が「科学的議論」の中に紛れ込んでいることが
      あったとしたら、それは間違いである。




 「主観的時間」は妄想を掻きたてるマッジクワード 

アウグスティヌスを源流とする
  • 「主観的時間」、「時制」、「測定者の時間」

等は、科学の領域には入り込むことはできなかったが、哲学者の興味を引き付け続けた。 たとえば、

(C1):
マクタガートの論拠は明確でないにしても、マクタガートの主張「 第67話:マクタガートパラドックス 」、 すなわち、
  • 主観的時間を科学として認めると、時間は存在しなくなる

は、結論的には同調したくなる
(C2):
「主観的時間」の哲学者ベルグソンは、「相対性理論」のアインシュタインに論争を挑もうとしたが、アインシュタインに
  • 「哲学者の時間は、わからない」

として、体よく論争を断られた。

等である。

科学でも一部の研究者は、この「測定者の時間」に未だに惑わされている。 たとえば、

(C3):
量子力学では、測定者の時間を前提にして
  • 「測定者が測定した瞬間に、波動関数が収縮する」

と信じているかもしれない。  (「射影仮説」).

量子言語の立場では、この(C3)は否定されるが、まだ決着が付いていないと考える研究者が少数派とも言えない現状にある。
「測定した瞬間」を説明するために、フォン・ノイマンは「抽象的自我」などという意味不明なことを言い出してしまった。 すなわち、
  •  「測定した瞬間」とは、抽象的自我が感知した瞬間
などと言ってしまった。
天才でも間違えることがあるという格好の例だと思う。




さて、
  • 「人生の問題①」と「世界の問題②」は全く別物

であるにもかかわらず
  • 「②からの必然として、①を言う」論法

を我々は本能的(DNA的)に好む。 すなわち、

  • キリスト教の教義に矛盾しないような世界を勝手に創作してしまって、
    • 「世界がこうなのだから、キリスト教の教義と整合性がある」

    という論法

に納得し勝ちである。 宗教の範囲内では、この論法を我々は違和感なく受け入れる。
しかし、 
  • この論法は、哲学でも本筋  

であることに気づいたのは、プラトンのイデア論であった。
すなわち、次の成功:
  • ①:ソクラテス (priceless な価値)         ②:プラトン  (イデア界) 

で、アウグスティヌスもこれを見習って
  • ①:キリスト (教義)         ②:アウグスティヌス (時間論) 

としたと思う。 そうならば、アウグスティヌスをプラトン二世と呼びたくなる。

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第21(下)話「ソクラテスとプラトン」で述べたことを以下に再記します。

「世界記述」とは、本来は、
  • 「世界を在りのままに記述すること」

のはずであったのに、プラトンとアウグステヌスは
  • 「信念・教義に都合の良いような世界を想定・構築すること」

としてしまった。 「問題のすり替え」であるが、このすり替えは大成功した。

後で分かる事ですが(すなわち、アウグスティヌスの「時間論」やカントの「コペルニクス的転回」とか、さらにウィトゲンシュタインの「私の言語の限界が、私の世界の限界」とかで、そして、最終的には「量子言語」でわかる事ですが)、世界記述とは、

  • 世界を在りのままに模写的に記述することではなくて、こっちの勝手な都合で世界をフィクション的に構成する 

ことで、 つまり、「写実画ではなくて、抽象画を描く」ことなのです。もうすこし具体的に言うと、たとえば、
  • 絵具の種類が「赤」と「緑」しかないというこちらの経済的都合のもとに、この二色でなるべくそれらしい写実画を描く
ことなのです




科学哲学(二元論的観念論)

量子言語(=測定理論)は、統計学と量子論を合わせた程度の強力な記述力を有する言語である。 量子言語の習得には、いろいろなアプローチの方法があっていい。 このブログでは、数物には関わらず、哲学【二元論的観念論】をメインに量子言語を紹介して、西洋哲学史の本流は常に量子言語に向かって進歩してきたことを確認する。ブログとは、一旦書いてしまうと、訂正するのが億劫になるものである。 したがって、本ブログと大幅な変更があるわけではないが、現時点での正式バージョンは【Western philosophy(PDF)】を見よ。

目次

  • 0:【Home】リンク付き目次(スマホ利用者用)
  • 1:量子力学の観測・解釈問題の解決
  • 2(上):科学哲学とは? (形而上学;統計学;量子力学)
  • 2(下):世界記述(至上)主義
  • 3(上):1+1=2:発明王エジソン;形而上学
  • 3(中):論理実証主義と形而上学
  • 3(下):ケルヴィン卿の形而上学
  • 4(上): 測定理論(=量子言語); 世界記述法の分類
  • 4(中):ソーカル事件の「脱構築」
  • 4(下)論考、知の欺瞞、量子言語
  • 5:古典力学的世界観;量子力学的世界観
  • 6:科学と統計学;量子言語;
  • 7:赤い糸 : 量子力学の観測と因果関係
  • 8:運命の量子的出会い(観測と因果律)
  • 9:コペンハーゲン解釈は虚構;因果と測定
  • 10: $[$一元論、二元論$]$×$[$実在論、観念論$]$
  • 11:離別の予感(測定と因果)
  • 12:ピタゴラス(万物は数)
  • 13:パルメニデスとヘラクレイトス;運動・変化
  • 14: 科学とは何か? 運動;因果律;確率;測定
  • 15:パルメニデスの理屈っぽさ: ゼノンのパラドックス
  • 16(上):ゼノンのパラドックスは未解決問題
  • 16(補): ハジキの公式:形而上学的命題
  • 16(中):「アキレスと亀」は未解決問題
  • 16(下): ゼノンのパラドックスの必然性
  • 17(上):存在論(パルメニデス)
  • 17(下):存在とは何か?(パルメニデス)
  • 18(上):[人気No.3]哲学は進歩したか?
  • 18:無知の知:ソクラテスの詭弁
  • 19:人間は万物の尺度:プロタゴラス×ソクラテス;倫理哲学
  • 20:イデア論:プラトンの詭弁
  • 21(上):プラトンのイデアは絶対基準・測定器のこと
  • 21(下): 西洋哲学はプラトンの脚注
  • 22(上):万学の祖アリストテレス;形相,質料
  • 22(下): プラトンとアリストテレスの融合;スコラ哲学
  • 23(上):アリストテレスの目的因
  • 23(下):三段論法を信じますか? アリストテレス
  • 23(補):必要条件と十分条件
  • 24(上):アリスタルコス(古代の地動説);アルキメデス
  • 24(下):アリスタルコス:古代の地動説
  • 25(上):ユークリッド幾何学--平行線の公準
  • 25(下):言語と数学;公理主義
  • 26:エラトステネス:古代最大の測定者
  • 27:総括〈ギリシャ vs.アレクサンドリア〉
  • 28:天動説(プトレマイオス)
  • 29:古代科学の三つの集大成
  • 30:アウグスティヌスとプラトン哲学
  • 31:アウグスティヌスと時間論;告白
  • 32:十字軍:イスラム文化(アリストテレス)の流入
  • 32.5: 位取り記数法(アラビア数字;ゼロの発見)
  • 33:神の存在証明(アンセルムス);スコラ哲学
  • 34:普遍論争と「存在・実在」;スコラ哲学
  • 36:[人気No.5]オッカムの剃刀(節約の原理)
  • 37:パラダイムシフト;コペルニクスとニュートン
  • 37(中):プラトンとアリストテレス;アテナイの学堂
  • 37(下):帰納主義;イドラ;ベーコン;経験論の祖
  • 38:天動説から地動説へ
  • 39:地動説・天動説とは、何か?
  • 40:ガリレオと地動説;ピサの斜塔;裁判
  • 41:ガリレオからニュートンへ
  • 42:プリンキピアと地動説
  • 43:因果関係とは何か?
  • 44:実在的因果関係(物理学)
  • 45:認識的因果関係(ヒューム・カント)
  • 46:数学的因果関係(ピタゴラス教団)
  • 47:言語的因果関係
  • 48:我思う、 ゆえに我在り(方法序説:デカルト)
  • 49:コギト命題からデカルト図式へ
  • 49下:物心二元論・心身二元論
  • 50:オカルト図式?
  • 52:中二病(デカルトの懐疑)
  • 53:世界記述と非ユークリッド的転回
  • 54:二元論・観念論に対する誤解
  • 56:ジョン・ロック$[$人間知性論$]$タブラ・ラーサ
  • 57:イギリス経験論の祖:ジョン・ロック;第ニ次性質
  • 58:大陸合理主義:ライプニッツ; 生得説
  • 59(上):日常言語はイギリス経験論的
  • 59(下):量子言語はカント哲学的
  • 60:唯心論:バークリー;存在するとは知覚されること
  • 61:懐疑主義:ヒューム
  • 62:実在的世界記述法と言語的世界記述法
  • 63:量子力学の道具主義化
  • 64:ライプニッツ・クラーク論争; 時空とは何か?
  • 65:コペンハーゲン解釈
  • 66:原点回帰:再びパルメニデスへ
  • 67:マクタガートのパラドックス:時間論:時制
  • 68:アウグスティヌスの時間論:主観的時間
  • 70:カント:二律背反(アンチノミー)
  • 71:「我思う、ゆえに我あり」を疑う
  • 72:カントの物自体; 模写説から構成説
  • 73:コペルニクス的転回;純粋理性批判
  • 74:純粋理性批判; アプリオリな総合判断;超越論的観念論
  • 78:カント登場の必然性
  • 78(補): 功利主義;ベンサム;最大多数の最大幸福
  • 79(上): ラプラスの魔:ゼノンのパラドックス
  • 79(下): ホーキング博士の哲学批判
  • 80:カントール:集合論
  • 80(下):空集合と選択公理
  • 81:数理論理学:数学のような、哲学のような
  • 82:弁証法という諺:ヘーゲル
  • 825: プラグマティズム(実用主義)のジレンマ
  • 83:論理哲学論考;ウィトゲンシュタイン
  • 84:言語論的転回;言語哲学
  • 86: 量子力学の解釈とは何か?
  • 88:量子言語の記述力;言語ゲーム;語りえぬもの;ウィトゲンシュタイン
  • 88.5:[人気No.1]心身問題の解決
  • 89: ボーア × アインシュタインの量子力学論争
  • 90: 二つの量子力学
  • 91: 数学の三大発見
  • 92: フォン・ノイマン;量子力学
  • 93: アリストテレス、ライプニッツ、フォン・ノイマン
  • 94: 確率の歴史
  • 95:確率の哲学: 確率とは何か?
  • 96: 確率論 vs. 量子言語
  • 97: 確率論: 二元論の消去
  • 98: 主観的時間; 科学哲学論争
  • 99: フィッシャーの最尤法
  • 100: 科学哲学の大きな物語の終焉
  • 補101:測定・推定・制御の科学哲学
  • 補102:ベイズ統計・ベイズの定理
  • 補103: 確率論と統計学
  • 150:量子力学再入門: ヒルベルト空間法
  • 152:エルミート行列のスペクトラル分解:量子力学再入門
  • 154:スピン:量子力学再入門
  • 156:ハミルトニアンの量子化:量子力学速習
  • 158:同時測定と可換条件:量子力学再入門
  • 160:ド・ブロイのパラドックス:量子力学再入門
  • 162:EPRパラドックス:量子力学再考
  • 164ベルの不等式:量子力学再考
  • 166:[人気No.4]ハイゼンベルグの不確定性原理はキャッチコピー
  • 168:EPRパラドックスの結末
  • 170:ハイゼンベルグの不確定性原理とEPRパラドックスは矛盾?
  • 174:[人気No.2]射影仮説:波束の収縮
  • 176:量子デコヒーレンス
  • 178:ハイゼンベルグ描像
  • 180:正準交換関係の不確定性関係
  • 182:行列のトレース
  • 184:ベルトランの逆説
  • 190:全射・単射・全単射
  • 192:」単射(順列)・全単射(スターリング数)
  • 500:量子言語入門(大学院講義ノート)