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33: 神の存在証明(アンセルムス);スコラ哲学

第33話
「神の存在証明」で、アンセルムスはスコラ哲学の祖 


アンセルムス(1033-1109)は「スコラ哲学の祖」で、「神の存在証明」で有名である。

(A): アンセルムスの「神の存在証明」

①:神はそれ以上大きなものがないようなものとする。

②:何かが人間の「知性の内」にあるだけではなく、「知性の外」にもある方がより大きいと言える。

③:もしもそのような存在が人間の「知性の内」にあるだけで、実際に存在しないのであれば、それは「それ以上大きなものがない」という定義①に反する。

④:そこで、神は「知性の内」にあるだけではなく、実際に存在する。



らしいが、 日常言語の中の単なる言葉に過ぎない。 まじめに「証明(A)」を読む必要はない。
カントがこの証明(A)の間違いを指摘したとどこかに書いてあったが、 もしこれが本当ならばカントも大したことがない。 日常言語の中の単なる言葉あそびを真に受けて、間違いなど指摘しても誰も褒めてくれないどころか馬鹿にされるのがオチだろう。 日常言語の中の論理が当てにならないことは、ゼノンのパラドックスで十分に喚起されたことなのに。 しかし、多分カントは本気だったのだと思う。 なぜならばカントは「アンチノミー」で同じ間違い(=同じ言葉遊び)をしているからである。

この「証明(A)」は、次の世界記述至上主義に逸脱している(第2話「世界記述主義」参照).

世界記述(至上)主義
第2話「世界記述主義」参照、 (第16(上)話「ゼノンのパラドックス」参照)、 (第23(下)話「三段論法を信じますか?」参照)

(A):世界記述主義


世界記述法から始めよ(=初めに、世界記述法ありき)
すなわち、
世界記述法(=言語体系)を先に宣言して、その下で、諸性質(「存在(=キーワード)」や「論理(=計算)」や「運動」等)を議論せよ。


たとえば、 以前に述べたように、
  • 世界記述法(たとえば、ニュートン力学、相対性理論、量子言語等)を決めてから、ゼノンのパラドックスや三段論法(証明)を議論しなければならない。 

そうならば、「神の存在証明」もそうでなければならないだろう。
もちろん、
  • 「神」は一番偉いから、「世界記述法」とか「論理」を超越している
  • 聖書に書いてあるのだから、信じなさい
と言われれば、反論できないが、そうならば、「アンセルムスの証明」も必要ない。

キリスト教徒ならば、「世界記述=聖書」なのだから、

 神が根源的キーワードである(すなわち、存在する) 

ことは自明で、「アンセルムスの論法」は妙な論法であるが、

ともかく、誰かに「証明した」と断言してもらいたい

という空気が充満してきたのだと思う。 キリストの「聖書」よりもアリストテレスの「三段論法」を選ぶとしたら、

アウグスティヌス=プラトン神話
「神の知性=イデア」の賞味期限が切れて、
アリストテレスの影響力が増大してきた

 第30話「アウグスティヌスとプラトン」参照)と言えるかもしれませんね。

ただし、次の意味でアンセルムスの功績は称えられていい。
「神の存在証明」の意義

(C):アンセルムス(スコラ哲学の祖)の深謀遠慮

アンセルムスを祖とするスコラ哲学とは、


「信仰」だけでなくて、「思考」も可とする

というキリスト教内の革命である。もちろん、思考のテーマは限定されるとしても、

「神の存在証明」

なら文句はないだろう。 これが「キリスト教内で一番重要なこと」に違いないからである。


しかも、
  • 「神の存在証明」というテーマは悪くは無かった。

なぜならば、「神の」を枕詞を思えば(すなわち、「神の」を免罪符と思えば)、「存在とは、何か?」で、更にこれは

(D): 「(世界記述の)キーワードは何か?」

に続くからである( 第17(上)話「存在論」参照)。 事実、スコラ哲学の大成者トマス・アクィナスはこれを追究・完成した。 
スコラ哲学は、「考えること」をキリスト教内に認めさせたわけで、それによって得られた高い知的ポテンシャルは、近世(デカルト、ニュートン等)の扉を開いたと思いたい。 江戸時代の高いポテンシャルが明治維新を成功させたように。
もちろん、
  • 「黒船来航」は「イスラム文化の流入」と対比すべきで、古今東西、尻に火が付けば馬鹿力が出る

ということだろうが、


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それにしても、私が存在して欲しいと思う神様は、「アンセルムスが存在証明をしてくれた神」ではありません。 存在証明をしてもらいたいのは、

彼(彼女)の胸に、キューピッドの矢を射てくれる神様

なのですが。  

だれもがこう思うはずなのに、 アンセルムスが名声を獲得した理由は、上の(D)、 すなわち、

(E):「思考停止」のマインドコントロールから解放されるためのマジックワード「神の存在証明」の発見
でしょうね。

アンセルムスの「神の存在証明」は、中世以降の哲学者たち(デカルト、カント等の大物)に大きな影響を与えたと言われているらしい。 多分、本当だろう。 デカルトは「我思う...」から「神の存在」を演繹してしまったし、カントも「アンチノミー」で勇み足をしてしまったのだから。 しかし、このような見える部分ではなくて、「見えない部分」で、 すなわち、

  • アンセルムスは、(D)(や(E))の意味で、大きな流れとして影響を与えた

のだと思う。 ニュートンが錬金術に没頭したように、「中世を引きずりながら現代」へ徐々に発展したのだと思う。


科学哲学(二元論的観念論)

量子言語(=測定理論)は、統計学と量子論を合わせた程度の強力な記述力を有する言語である。 量子言語の習得には、いろいろなアプローチの方法があっていい。 このブログでは、数物には関わらず、哲学【二元論的観念論】をメインに量子言語を紹介して、西洋哲学史の本流は常に量子言語に向かって進歩してきたことを確認する。ブログとは、一旦書いてしまうと、訂正するのが億劫になるものである。 したがって、本ブログと大幅な変更があるわけではないが、現時点での正式バージョンは【Western philosophy(PDF)】を見よ。

目次

  • 0:【Home】リンク付き目次(スマホ利用者用)
  • 1:量子力学の観測・解釈問題の解決
  • 2(上):科学哲学とは? (形而上学;統計学;量子力学)
  • 2(下):世界記述(至上)主義
  • 3(上):1+1=2:発明王エジソン;形而上学
  • 3(中):論理実証主義と形而上学
  • 3(下):ケルヴィン卿の形而上学
  • 4(上): 測定理論(=量子言語); 世界記述法の分類
  • 4(中):ソーカル事件の「脱構築」
  • 4(下)論考、知の欺瞞、量子言語
  • 5:古典力学的世界観;量子力学的世界観
  • 6:科学と統計学;量子言語;
  • 7:赤い糸 : 量子力学の観測と因果関係
  • 8:運命の量子的出会い(観測と因果律)
  • 9:コペンハーゲン解釈は虚構;因果と測定
  • 10: $[$一元論、二元論$]$×$[$実在論、観念論$]$
  • 11:離別の予感(測定と因果)
  • 12:ピタゴラス(万物は数)
  • 13:パルメニデスとヘラクレイトス;運動・変化
  • 14: 科学とは何か? 運動;因果律;確率;測定
  • 15:パルメニデスの理屈っぽさ: ゼノンのパラドックス
  • 16(上):ゼノンのパラドックスは未解決問題
  • 16(補): ハジキの公式:形而上学的命題
  • 16(中):「アキレスと亀」は未解決問題
  • 16(下): ゼノンのパラドックスの必然性
  • 17(上):存在論(パルメニデス)
  • 17(下):存在とは何か?(パルメニデス)
  • 18(上):[人気No.3]哲学は進歩したか?
  • 18:無知の知:ソクラテスの詭弁
  • 19:人間は万物の尺度:プロタゴラス×ソクラテス;倫理哲学
  • 20:イデア論:プラトンの詭弁
  • 21(上):プラトンのイデアは絶対基準・測定器のこと
  • 21(下): 西洋哲学はプラトンの脚注
  • 22(上):万学の祖アリストテレス;形相,質料
  • 22(下): プラトンとアリストテレスの融合;スコラ哲学
  • 23(上):アリストテレスの目的因
  • 23(下):三段論法を信じますか? アリストテレス
  • 23(補):必要条件と十分条件
  • 24(上):アリスタルコス(古代の地動説);アルキメデス
  • 24(下):アリスタルコス:古代の地動説
  • 25(上):ユークリッド幾何学--平行線の公準
  • 25(下):言語と数学;公理主義
  • 26:エラトステネス:古代最大の測定者
  • 27:総括〈ギリシャ vs.アレクサンドリア〉
  • 28:天動説(プトレマイオス)
  • 29:古代科学の三つの集大成
  • 30:アウグスティヌスとプラトン哲学
  • 31:アウグスティヌスと時間論;告白
  • 32:十字軍:イスラム文化(アリストテレス)の流入
  • 32.5: 位取り記数法(アラビア数字;ゼロの発見)
  • 33:神の存在証明(アンセルムス);スコラ哲学
  • 34:普遍論争と「存在・実在」;スコラ哲学
  • 36:[人気No.5]オッカムの剃刀(節約の原理)
  • 37:パラダイムシフト;コペルニクスとニュートン
  • 37(中):プラトンとアリストテレス;アテナイの学堂
  • 37(下):帰納主義;イドラ;ベーコン;経験論の祖
  • 38:天動説から地動説へ
  • 39:地動説・天動説とは、何か?
  • 40:ガリレオと地動説;ピサの斜塔;裁判
  • 41:ガリレオからニュートンへ
  • 42:プリンキピアと地動説
  • 43:因果関係とは何か?
  • 44:実在的因果関係(物理学)
  • 45:認識的因果関係(ヒューム・カント)
  • 46:数学的因果関係(ピタゴラス教団)
  • 47:言語的因果関係
  • 48:我思う、 ゆえに我在り(方法序説:デカルト)
  • 49:コギト命題からデカルト図式へ
  • 49下:物心二元論・心身二元論
  • 50:オカルト図式?
  • 52:中二病(デカルトの懐疑)
  • 53:世界記述と非ユークリッド的転回
  • 54:二元論・観念論に対する誤解
  • 56:ジョン・ロック$[$人間知性論$]$タブラ・ラーサ
  • 57:イギリス経験論の祖:ジョン・ロック;第ニ次性質
  • 58:大陸合理主義:ライプニッツ; 生得説
  • 59(上):日常言語はイギリス経験論的
  • 59(下):量子言語はカント哲学的
  • 60:唯心論:バークリー;存在するとは知覚されること
  • 61:懐疑主義:ヒューム
  • 62:実在的世界記述法と言語的世界記述法
  • 63:量子力学の道具主義化
  • 64:ライプニッツ・クラーク論争; 時空とは何か?
  • 65:コペンハーゲン解釈
  • 66:原点回帰:再びパルメニデスへ
  • 67:マクタガートのパラドックス:時間論:時制
  • 68:アウグスティヌスの時間論:主観的時間
  • 70:カント:二律背反(アンチノミー)
  • 71:「我思う、ゆえに我あり」を疑う
  • 72:カントの物自体; 模写説から構成説
  • 73:コペルニクス的転回;純粋理性批判
  • 74:純粋理性批判; アプリオリな総合判断;超越論的観念論
  • 78:カント登場の必然性
  • 78(補): 功利主義;ベンサム;最大多数の最大幸福
  • 79(上): ラプラスの魔:ゼノンのパラドックス
  • 79(下): ホーキング博士の哲学批判
  • 80:カントール:集合論
  • 80(下):空集合と選択公理
  • 81:数理論理学:数学のような、哲学のような
  • 82:弁証法という諺:ヘーゲル
  • 825: プラグマティズム(実用主義)のジレンマ
  • 83:論理哲学論考;ウィトゲンシュタイン
  • 84:言語論的転回;言語哲学
  • 86: 量子力学の解釈とは何か?
  • 88:量子言語の記述力;言語ゲーム;語りえぬもの;ウィトゲンシュタイン
  • 88.5:[人気No.1]心身問題の解決
  • 89: ボーア × アインシュタインの量子力学論争
  • 90: 二つの量子力学
  • 91: 数学の三大発見
  • 92: フォン・ノイマン;量子力学
  • 93: アリストテレス、ライプニッツ、フォン・ノイマン
  • 94: 確率の歴史
  • 95:確率の哲学: 確率とは何か?
  • 96: 確率論 vs. 量子言語
  • 97: 確率論: 二元論の消去
  • 98: 主観的時間; 科学哲学論争
  • 99: フィッシャーの最尤法
  • 100: 科学哲学の大きな物語の終焉
  • 補101:測定・推定・制御の科学哲学
  • 補102:ベイズ統計・ベイズの定理
  • 補103: 確率論と統計学
  • 150:量子力学再入門: ヒルベルト空間法
  • 152:エルミート行列のスペクトラル分解:量子力学再入門
  • 154:スピン:量子力学再入門
  • 156:ハミルトニアンの量子化:量子力学速習
  • 158:同時測定と可換条件:量子力学再入門
  • 160:ド・ブロイのパラドックス:量子力学再入門
  • 162:EPRパラドックス:量子力学再考
  • 164ベルの不等式:量子力学再考
  • 166:[人気No.4]ハイゼンベルグの不確定性原理はキャッチコピー
  • 168:EPRパラドックスの結末
  • 170:ハイゼンベルグの不確定性原理とEPRパラドックスは矛盾?
  • 174:[人気No.2]射影仮説:波束の収縮
  • 176:量子デコヒーレンス
  • 178:ハイゼンベルグ描像
  • 180:正準交換関係の不確定性関係
  • 182:行列のトレース
  • 184:ベルトランの逆説
  • 190:全射・単射・全単射
  • 192:」単射(順列)・全単射(スターリング数)
  • 500:量子言語入門(大学院講義ノート)