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53:世界記述と非ユークリッド的転回

第53話
「世界記述」に関する2つの先入観

このブログでは、何度も何度も繰り返していることであるが、「世界記述」に関する2つの先入観を打破するために、次を主張している。 すなわち、
(A): 「世界記述法至上主義」

(B): 「非ユークリッド的転回」
で、 これについて再度確認をしておく。


(A):世界記述至上主義
第2話「世界記述主義」参照


(A):世界記述主義


世界記述法から始めよ(=初めに、世界記述法ありき)
すなわち、
世界記述法(=言語体系)を先に宣言して、その下で、諸性質(「存在(=キーワード)」や「論理(=計算)」や「運動」等)を議論せよ。




これを忘れてしまうと、このブログで説明することであるが、以下のような袋小路に陥ってしまう。

  • 「ゼノンのパラドックス」を等比級数がわからない馬鹿な哲学者の戯言と思ってしまう

  • 「過去」は記憶の中に、「未来」は予測の中に、「現在」は実際に存在する。 などと言われると納得してしまう

  • 「アンセルムスの神の存在証明」に反論できない

  • 「量子力学では三段論法が成立しない」と聞くとビックリする

  • 「天動説 vs. 地動説」の意味も理解してないのに、なんとなく地動説を信じてしまう

  • コギト命題「我思う、故に我あり」を疑う余地のない真理と信じてしまう

  • 「因果関係とは、何か?」が現代的未解決問題であることを理解できない

  • カントのアンチノミーにもなんとなく納得してしまう

  • アインシュタインの「時空」しか理解できなくなってしまって、「時空とは、何か?」が現代的未解決問題であることを理解できない 

  • 数理論理学を哲学と思ってしまう。 クレタ人のパラドックスとかゲーデルの不完全定理に興味を持ってしまう。

  • 「認識論」や「心の哲学」を哲学と思ってしまう。

  • 「弁証法」がことわざの一種であることがわからなくなってしまう

  • 「確率」を数学的概念だと思ってしまう


等である。

もちろん、ニュートンがプリンキピアで示しているように、
  • この「(A):世界記述主義」は、ニュートンにとっては当たり前のこと

であった。

また、
(B): 「非ユークリッド的転回」  


(B): 非ユークリッド的転回

第25(上)話「ユークリッド」で述べたように、ユークリッドの細心の注意にも関わらず、「ユークリッドの原論」によって、
①:確実なことから、スタートすることが最良の方法
という思い込みが形成されてしまった。 

ガウス等による非ユークリッド幾何学の発見は、この思い込みを打破して、
②:何からスタートしても、それが生産的ならばよい。
と主張した。 


この
  • 非ユークリッド的転回【①→②】

は、現代においてもまだ十分に認知されているとは言えないかもしれない。


たとえば、

  • 統計学は、世界記述法との係わりをわずらわしいとして、「確実な数学」の一分野という地位に甘んじている(第3(下)話)
  • 思い込み①には多くの哲学者が嵌ってしまった。 特に、デカルトはコギト命題「我思う、ゆえに我在り」の確実性を強調しすぎた(第52話)。しかし、穿って考えれば、これはデカルトが仕掛けたトリックで、
    • フランシスコ・べーコン(1561年 - 1626年))の帰納主義の著作『ノヴム・オルガヌム』(1620)の中で強調されている「悪いイドラの排除」が一般に受け入られていることを利用しようと考えたのかもしれない。 ①の方法ならば、「悪いイドラ」を排除できるのだから、思い込み①を利用して、三つのキーワード「心・身・物」を提示した

    とも言える。 ①こそ「最悪のイドラ」であったが、方法序説の読者には気づかれず済んだばかりか称賛されたことは幸運だった。 このようなトリックを使わなければ、「デカルトの(役に立たない)観念論的二元論」は受け入れられなかったかもしれない。 

  • 量子言語は「オカルト図式(=怪しさ満載のデカルト図式)」からスタートする観念論的二元論であるが、役に立つことを誰もが認めているので、②の立場を主張できる。


もちろん、
  • この「(B):非ユークリッド的転回」は、ニュートンにとっては当たり前のこと

であった。 なぜならば、「ニュートン力学の運動の三法則」は、決して自明とは言えないからである。


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長々とここまで来てしまったが、2つのこと
  • 「世界記述法というイドラが先で、その下で世界を理解する」と「非ユークリッド的転回」

しか議論していないですね。 

しかし、この二つは現代でも常識化しているわけではないでしょうね。 「アリストテレスの三段論法」と「デカルトの『我思う、ゆえに我あり』」によって、「中二病」が蔓延してしまいましたからね。 もちろん、ニュートン信者も多数いますが、彼らは理系分野に集中して生息していて、
  • 自分らは、哲学とは無関係

というスタンスですからね


科学哲学(二元論的観念論)

量子言語(=測定理論)は、統計学と量子論を合わせた程度の強力な記述力を有する言語である。 量子言語の習得には、いろいろなアプローチの方法があっていい。 このブログでは、数物には関わらず、哲学【二元論的観念論】をメインに量子言語を紹介して、西洋哲学史の本流は常に量子言語に向かって進歩してきたことを確認する。ブログとは、一旦書いてしまうと、訂正するのが億劫になるものである。 したがって、本ブログと大幅な変更があるわけではないが、現時点での正式バージョンは【Western philosophy(PDF)】を見よ。

目次

  • 0:【Home】リンク付き目次(スマホ利用者用)
  • 1:量子力学の観測・解釈問題の解決
  • 2(上):科学哲学とは? (形而上学;統計学;量子力学)
  • 2(下):世界記述(至上)主義
  • 3(上):1+1=2:発明王エジソン;形而上学
  • 3(中):論理実証主義と形而上学
  • 3(下):ケルヴィン卿の形而上学
  • 4(上): 測定理論(=量子言語); 世界記述法の分類
  • 4(中):ソーカル事件の「脱構築」
  • 4(下)論考、知の欺瞞、量子言語
  • 5:古典力学的世界観;量子力学的世界観
  • 6:科学と統計学;量子言語;
  • 7:赤い糸 : 量子力学の観測と因果関係
  • 8:運命の量子的出会い(観測と因果律)
  • 9:コペンハーゲン解釈は虚構;因果と測定
  • 10: $[$一元論、二元論$]$×$[$実在論、観念論$]$
  • 11:離別の予感(測定と因果)
  • 12:ピタゴラス(万物は数)
  • 13:パルメニデスとヘラクレイトス;運動・変化
  • 14: 科学とは何か? 運動;因果律;確率;測定
  • 15:パルメニデスの理屈っぽさ: ゼノンのパラドックス
  • 16(上):ゼノンのパラドックスは未解決問題
  • 16(補): ハジキの公式:形而上学的命題
  • 16(中):「アキレスと亀」は未解決問題
  • 16(下): ゼノンのパラドックスの必然性
  • 17(上):存在論(パルメニデス)
  • 17(下):存在とは何か?(パルメニデス)
  • 18(上):[人気No.3]哲学は進歩したか?
  • 18:無知の知:ソクラテスの詭弁
  • 19:人間は万物の尺度:プロタゴラス×ソクラテス;倫理哲学
  • 20:イデア論:プラトンの詭弁
  • 21(上):プラトンのイデアは絶対基準・測定器のこと
  • 21(下): 西洋哲学はプラトンの脚注
  • 22(上):万学の祖アリストテレス;形相,質料
  • 22(下): プラトンとアリストテレスの融合;スコラ哲学
  • 23(上):アリストテレスの目的因
  • 23(下):三段論法を信じますか? アリストテレス
  • 23(補):必要条件と十分条件
  • 24(上):アリスタルコス(古代の地動説);アルキメデス
  • 24(下):アリスタルコス:古代の地動説
  • 25(上):ユークリッド幾何学--平行線の公準
  • 25(下):言語と数学;公理主義
  • 26:エラトステネス:古代最大の測定者
  • 27:総括〈ギリシャ vs.アレクサンドリア〉
  • 28:天動説(プトレマイオス)
  • 29:古代科学の三つの集大成
  • 30:アウグスティヌスとプラトン哲学
  • 31:アウグスティヌスと時間論;告白
  • 32:十字軍:イスラム文化(アリストテレス)の流入
  • 32.5: 位取り記数法(アラビア数字;ゼロの発見)
  • 33:神の存在証明(アンセルムス);スコラ哲学
  • 34:普遍論争と「存在・実在」;スコラ哲学
  • 36:[人気No.5]オッカムの剃刀(節約の原理)
  • 37:パラダイムシフト;コペルニクスとニュートン
  • 37(中):プラトンとアリストテレス;アテナイの学堂
  • 37(下):帰納主義;イドラ;ベーコン;経験論の祖
  • 38:天動説から地動説へ
  • 39:地動説・天動説とは、何か?
  • 40:ガリレオと地動説;ピサの斜塔;裁判
  • 41:ガリレオからニュートンへ
  • 42:プリンキピアと地動説
  • 43:因果関係とは何か?
  • 44:実在的因果関係(物理学)
  • 45:認識的因果関係(ヒューム・カント)
  • 46:数学的因果関係(ピタゴラス教団)
  • 47:言語的因果関係
  • 48:我思う、 ゆえに我在り(方法序説:デカルト)
  • 49:コギト命題からデカルト図式へ
  • 49下:物心二元論・心身二元論
  • 50:オカルト図式?
  • 52:中二病(デカルトの懐疑)
  • 53:世界記述と非ユークリッド的転回
  • 54:二元論・観念論に対する誤解
  • 56:ジョン・ロック$[$人間知性論$]$タブラ・ラーサ
  • 57:イギリス経験論の祖:ジョン・ロック;第ニ次性質
  • 58:大陸合理主義:ライプニッツ; 生得説
  • 59(上):日常言語はイギリス経験論的
  • 59(下):量子言語はカント哲学的
  • 60:唯心論:バークリー;存在するとは知覚されること
  • 61:懐疑主義:ヒューム
  • 62:実在的世界記述法と言語的世界記述法
  • 63:量子力学の道具主義化
  • 64:ライプニッツ・クラーク論争; 時空とは何か?
  • 65:コペンハーゲン解釈
  • 66:原点回帰:再びパルメニデスへ
  • 67:マクタガートのパラドックス:時間論:時制
  • 68:アウグスティヌスの時間論:主観的時間
  • 70:カント:二律背反(アンチノミー)
  • 71:「我思う、ゆえに我あり」を疑う
  • 72:カントの物自体; 模写説から構成説
  • 73:コペルニクス的転回;純粋理性批判
  • 74:純粋理性批判; アプリオリな総合判断;超越論的観念論
  • 78:カント登場の必然性
  • 78(補): 功利主義;ベンサム;最大多数の最大幸福
  • 79(上): ラプラスの魔:ゼノンのパラドックス
  • 79(下): ホーキング博士の哲学批判
  • 80:カントール:集合論
  • 80(下):空集合と選択公理
  • 81:数理論理学:数学のような、哲学のような
  • 82:弁証法という諺:ヘーゲル
  • 825: プラグマティズム(実用主義)のジレンマ
  • 83:論理哲学論考;ウィトゲンシュタイン
  • 84:言語論的転回;言語哲学
  • 86: 量子力学の解釈とは何か?
  • 88:量子言語の記述力;言語ゲーム;語りえぬもの;ウィトゲンシュタイン
  • 88.5:[人気No.1]心身問題の解決
  • 89: ボーア × アインシュタインの量子力学論争
  • 90: 二つの量子力学
  • 91: 数学の三大発見
  • 92: フォン・ノイマン;量子力学
  • 93: アリストテレス、ライプニッツ、フォン・ノイマン
  • 94: 確率の歴史
  • 95:確率の哲学: 確率とは何か?
  • 96: 確率論 vs. 量子言語
  • 97: 確率論: 二元論の消去
  • 98: 主観的時間; 科学哲学論争
  • 99: フィッシャーの最尤法
  • 100: 科学哲学の大きな物語の終焉
  • 補101:測定・推定・制御の科学哲学
  • 補102:ベイズ統計・ベイズの定理
  • 補103: 確率論と統計学
  • 150:量子力学再入門: ヒルベルト空間法
  • 152:エルミート行列のスペクトラル分解:量子力学再入門
  • 154:スピン:量子力学再入門
  • 156:ハミルトニアンの量子化:量子力学速習
  • 158:同時測定と可換条件:量子力学再入門
  • 160:ド・ブロイのパラドックス:量子力学再入門
  • 162:EPRパラドックス:量子力学再考
  • 164ベルの不等式:量子力学再考
  • 166:[人気No.4]ハイゼンベルグの不確定性原理はキャッチコピー
  • 168:EPRパラドックスの結末
  • 170:ハイゼンベルグの不確定性原理とEPRパラドックスは矛盾?
  • 174:[人気No.2]射影仮説:波束の収縮
  • 176:量子デコヒーレンス
  • 178:ハイゼンベルグ描像
  • 180:正準交換関係の不確定性関係
  • 182:行列のトレース
  • 184:ベルトランの逆説
  • 190:全射・単射・全単射
  • 192:」単射(順列)・全単射(スターリング数)
  • 500:量子言語入門(大学院講義ノート)