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60:唯心論:バークリー;存在するとは知覚されること

唯心論:聖職者バークリー「存在するとは知覚されること」
ここは、Koara(9章近代哲学 9.5節バークリー)] からの抜粋である。


イギリス経験論の哲学者バークリー(1685 -1753)は, 次の(G1),(G2),(G3)で有名である.


(G1)
バークリーは聖職者で, ロックの第一次性質, 第二次性質において, 「第一次性質=神性」とした. したがって, バークリー哲学は唯心論と呼ばれている

(G2)
ニュートンの微分法において, $\frac{dx}{dt}=\lim_{h \rightarrow 0} \frac{x(t+h)-x(t)}{h}$ の極限の理解が不十分であることを指摘した

(G3)
二元論の奥義:
存在するとは知覚されること

を残した






要するに, 神父バークリーは
  • 「ニュートンのすることなすことすべて」が気に入らない

わけで, 常にアンチ・ニュートンの立場であった. 認識論における「イギリス経験論 vs. 大陸合理主義」の不毛な議論が盛り上がった理由として,
  • キリスト教とニュートン力学の緩衝地帯としての (キリスト教の出店としての) 認識論の存在意義がある

とするならば, バークリーは一番正直だった. というより、バークリーのような人材が参入してくことが当然で、必然的にキリスト教の出店として、大きな勢力になり得たのだろう。

「バークリーとニュートンの位置」を第 1 講の主張 1.2 で, もう一度確認しておこう.



上の (G1) では, バークリーは「イギリス経験論 vs. 大陸合理主義」のどさくさに紛れて, 「神」を持ち込んだ. 意味不明だが,
第一次性質は神性

である。
ジョン. ロックは科学者の目をもっていたが、バークリーは 「イギリス経験論 vs. 大陸合理主義」が科学の方向に向かわないことをいち早く見抜いていたのだと思う. 唯心論 [なんでも心に還元] も広義の自己言及的ロジックと考えるが, 著者は「自己言及的 (反コペンハーゲン解釈的)」の意味を完全に理解しているわけではない.

(G2): 極限($\lim\frac{0}{0}$)の問題
微分法の数学的不備 (G2) は, 当時誰だって (ニュートンだって) 知っていたことで, バークリーの声が大きかっただけのことだろう. ニュートンは,

極限($\lim\frac{0}{0}$)の問題は些細なことで, ニュートン力学がひっくり返るようなことではない

として, 物理的には深刻な問題と考えなかったのだと思う. バークリーのような外野がうるさいから、ニュートンはプリンキピアを初等幾何で書いたわけだが、今から思えば、ニュートンの失敗だった。 ニュートン以後のイギリスの数学が大陸の数学に遅れを取った原因になってしまった。 ニュートンは
$$
\frac{dx}{dt}= \lim_{h \rightarrow 0} \frac{x(t+h)-x(t)}{h}=速度
$$
であるが, 右辺の速度があるのは当たり前と考えたに違いない. 重箱の隅と思って, バークリーの声はニュートンの耳に届かなかった. もちろんニュートンは正しいのだが,

この$\lim$の問題は数学的には意外と重要だった.

この数学的不備が解決されたのは (すなわち, $\epsilon - \delta$論法の発見は) 百数十年後で, コーシーやワイエルシュトラスの出現を待たねばならなかった. 今から思うと, 当時 (1700 年前後) の人材で, $\epsilon - \delta$論法を発見する可能性があったのはライプニッツだけと思うが, ライプニッツは別のことで忙しかったのだろう. というか, ガウス (1777-1855) ですら見逃した問題なのだから, ニュートン, ライプニッツを責められない. $\epsilon - \delta$論法の発見は大数学者たちの盲点だった.


(G3):存在するとは知覚されること
さて, 次の金言を考えよう.
  • (H1): 測定無くして, 科学無し

(=[観測されないということは存在しないということ]=[存在するとは知覚されること(バークリー)])
である. だれが考えたって, この (H1) は絶対に正しいと思うかもしれない. 事実, 量子言語では, 次のように「測定」の重要さが前面に主張されている (cf. 1.1 節).
$$
\fbox{量子言語}=\fbox{測定} + \fbox{因果関係} +[言語的コペンハーゲン解釈]
\tag{9.1}
$$
となっている。しかし, この絶対的な金言 (H1) を無視した天才がニュートン (とアインシュタイン) である. 実際に, ニュートン力学は次のように定式化される.
$$
\fbox{ニュートン力学} =[ 測定無し] + \fbox{因果関係}
\tag{9.2}
$$
ここで「驚くべきこと」は, ニュートン力学 (9.2) に「測定・観測」という概念を入れなかったニュートンの慧眼である. 天才とは, 「絶対的な金言 (H1)」にも惑わされないものなのだろう.
$\qquad$

次は著者のフィクションである.
  • (H2): ニュートンが熟考に熟考を重ねてたどり着いた境地「測定の排除」を, アンチ・ニュートン派の急先鋒バークリーは, ニュートン力学の弱点と考えて、

    存在するとは知覚されること

    と発言してしまった.

バークリーにとっては何気なく言ったことなのだと思うが, これが「二元論の奥義」になる. これは量子論の奥義でもあるわけだが、
アインシュタインに次のように言われたら、
  • 月は見ていなくても存在する。 人類誕生前にも地球は存在したはず
こう言われたら、だれも答えられない。 それでも、今のところ、量子論はアインシュタインに勝ったとされている。

以上は、Koara(9章近代哲学 9.5節バークリー)] からの抜粋である。

量子言語(二元論的観念論)

量子言語(=測定理論)は、統計学と量子論を合わせた程度の強力な記述力を有する言語である。 量子言語の習得には、いろいろなアプローチの方法があっていい。 このブログでは、数物には関わらず、哲学【二元論的観念論】をメインに量子言語を紹介して、西洋哲学史の本流は常に量子言語に向かって進歩してきたことを確認する。ブログとは、一旦書いてしまうと、訂正するのが億劫になるものである。したがって、本ブログと大幅な変更があるわけではないが、現時点での正式バージョンは
【理系の西洋哲学史;大学院講義ノート(KOARA 2018)】 を見よ。また、

目次

  • 0:【Home】理系の西洋哲学史;リンク付き目次
  • 1:量子力学の観測・解釈問題の解決
  • 2(上):科学哲学とは? (形而上学;統計学;量子力学)
  • 2(下):世界記述(至上)主義
  • 3(上):1+1=2:発明王エジソン;形而上学
  • 3(中):論理実証主義と形而上学
  • 3(下):ケルヴィン卿の形而上学
  • 4(上): 測定理論(=量子言語); 世界記述法の分類
  • 4(中):ソーカル事件の「脱構築」
  • 4(下)論考、知の欺瞞、量子言語
  • 5:古典力学的世界観;量子力学的世界観
  • 6:科学と統計学;量子言語;
  • 7:赤い糸 : 量子力学の観測と因果関係
  • 8:運命の量子的出会い(観測と因果律)
  • 9:コペンハーゲン解釈は虚構;因果と測定
  • 10: $[$一元論、二元論$]$×$[$実在論、観念論$]$
  • 11:離別の予感(測定と因果)
  • 12:ピタゴラス(万物は数)
  • 13:パルメニデスとヘラクレイトス;運動・変化
  • 14: 科学とは何か? 運動;因果律;確率;測定
  • 15:パルメニデスの理屈っぽさ: ゼノンのパラドックス
  • 16(上):ゼノンのパラドックスは未解決問題
  • 16(補): ハジキの公式:形而上学的命題
  • 16(中):「アキレスと亀」は未解決問題
  • 16(下): ゼノンのパラドックスの必然性
  • 17(上):存在論(パルメニデス)
  • 17(下):存在とは何か?(パルメニデス)
  • 18(上):[人気No.3]哲学は進歩したか?
  • 18:無知の知:ソクラテスの詭弁
  • 19:人間は万物の尺度:プロタゴラス×ソクラテス;倫理哲学
  • 20:イデア論:プラトンの詭弁
  • 21(上):プラトンのイデアは絶対基準・測定器のこと
  • 21(下): 西洋哲学はプラトンの脚注
  • 21.3; [New]幾何学を知らぬ者、この門をくぐるべからず
  • 21.5:[New] プラトンの評価
  • 22(上):万学の祖アリストテレス;形相,質料
  • 22(下): プラトンとアリストテレスの融合;スコラ哲学
  • 23(上):アリストテレスの目的因
  • 23(下):三段論法を信じますか? アリストテレス
  • 23(下):[New]三段論法は量子系では当てにならない
  • 23(補):必要条件と十分条件
  • 24(上):アリスタルコス(古代の地動説);アルキメデス
  • 24(下):アリスタルコス:古代の地動説
  • 25(上):ユークリッド幾何学--平行線の公準
  • 25:[New]アルキメデス;(エウレーカ(発見した))
  • 25(下):言語と数学;公理主義
  • 26:エラトステネス:古代最大の測定者
  • 27:総括〈ギリシャ vs.アレクサンドリア〉
  • 28:天動説(プトレマイオス)
  • 29:古代科学の三つの集大成
  • 30:アウグスティヌスとプラトン哲学
  • 31:アウグスティヌスと時間論;告白
  • 32:十字軍:イスラム文化(アリストテレス)の流入
  • 32.5: 位取り記数法(アラビア数字;ゼロの発見)
  • 33:神の存在証明(アンセルムス);スコラ哲学
  • 34:普遍論争と「存在・実在」;スコラ哲学
  • 36:[人気No.5]オッカムの剃刀(節約の原理)
  • 37:パラダイムシフト;コペルニクスとニュートン
  • 37(中):プラトンとアリストテレス;アテナイの学堂
  • 37(下):帰納主義;イドラ;ベーコン;経験論の祖
  • 38:天動説から地動説へ
  • 39:地動説・天動説とは、何か?
  • 40:ガリレオと地動説;ピサの斜塔;裁判
  • 40.5:[New]ガリレオ;新科学対話の私的な疑問
  • 41:ガリレオからニュートンへ
  • 42:プリンキピアと地動説
  • 42.5:[New]ニュートンは何故微分方程式を使わないで、プリンキピアを書いたのか?
  • 43:因果関係とは何か?
  • 44:実在的因果関係(物理学)
  • 45:認識的因果関係(ヒューム・カント)
  • 46:数学的因果関係(ピタゴラス教団)
  • 47:言語的因果関係
  • 48:我思う、 ゆえに我在り(方法序説:デカルト)
  • 49:コギト命題からデカルト図式へ
  • 50:[New]コペンハーゲン解釈;オカルト図式?
  • 52,5:[New]デカルトの理系的評価
  • 53:世界記述と非ユークリッド的転回
  • 54:二元論・観念論に対する誤解
  • 56:ジョン・ロック$[$人間知性論$]$タブラ・ラーサ
  • 57:イギリス経験論の祖:ジョン・ロック;第ニ次性質
  • 58:大陸合理主義:ライプニッツ; 生得説
  • 59(上):日常言語はイギリス経験論的
  • 59(下):量子言語はカント哲学的
  • 60:[New] 唯心論:バークリー;存在するとは知覚されること
  • 61:懐疑主義:ヒューム
  • 62:実在的世界記述法と言語的世界記述法
  • 63:量子力学の道具主義化
  • 64:ライプニッツ・クラーク論争; 時空とは何か?
  • 65:コペンハーゲン解釈
  • 65.3:「我思う、ゆえに我あり」を疑う
  • 65.7:[New]私とは何か?
  • 65.7:[New]世界五分前仮説
  • 66:原点回帰:再びパルメニデスへ
  • 67:マクタガートのパラドックス:時間論:時制
  • 68:アウグスティヌスの時間論:主観的時間
  • 69:[New; 一番人気] 水槽脳の解決
  • 70:カント:二律背反(アンチノミー)
  • 72:カントの物自体; 模写説から構成説
  • 73:コペルニクス的転回;純粋理性批判
  • 74:純粋理性批判; アプリオリな総合判断;超越論的観念論
  • 78:カント登場の必然性
  • 78.5:[New]カント「純理」の理系的評価
  • 78(補): 功利主義;ベンサム;最大多数の最大幸福
  • 79(上): ラプラスの魔:ゼノンのパラドックス
  • 79(下): ホーキング博士の哲学批判
  • 80:カントール:集合論
  • 80(下):空集合と選択公理
  • 81:数理論理学:数学のような、哲学のような
  • 82:弁証法という諺:ヘーゲル
  • 825: プラグマティズム(実用主義)のジレンマ
  • 83:論理哲学論考;ウィトゲンシュタイン
  • 84:言語論的転回;言語哲学
  • 84.5:[New]ウィトゲンシュタインの評価
  • 86: 量子力学の解釈とは何か?
  • 88:量子言語の記述力;言語ゲーム;語りえぬもの;ウィトゲンシュタイン
  • 88.5:[人気No.1]心身問題の解決
  • 89: ボーア × アインシュタインの量子力学論争
  • 90: 二つの量子力学
  • 91: 数学の三大発見
  • 92: フォン・ノイマン;量子力学
  • 93: アリストテレス、ライプニッツ、フォン・ノイマン
  • 94: 確率の歴史
  • 95:確率の哲学: 確率とは何か?
  • 96: 確率論 vs. 量子言語
  • 97: 確率論: 二元論の消去
  • 98: 主観的時間; 科学哲学論争
  • 99: フィッシャーの最尤法
  • 100: 科学哲学の大きな物語の終焉
  • 補101:測定・推定・制御の科学哲学
  • 補102:ベイズ統計・ベイズの定理
  • 補103: 確率論と統計学
  • 150:量子力学再入門: ヒルベルト空間法
  • 152:エルミート行列のスペクトラル分解:量子力学再入門
  • 154:スピン:量子力学再入門
  • 156:ハミルトニアンの量子化:量子力学速習
  • 158:同時測定と可換条件:量子力学再入門
  • 160:ド・ブロイのパラドックス:量子力学再入門
  • 162:EPRパラドックス:量子力学再考
  • 164:[人気No.6]ベルの不等式:量子力学再考
  • 166:[人気No.4]ハイゼンベルグの不確定性原理はキャッチコピー
  • 168:EPRパラドックスの結末
  • 170:ハイゼンベルグの不確定性原理とEPRパラドックスは矛盾?
  • 174:[人気No.2]射影仮説:波束の収縮
  • 176:量子デコヒーレンス
  • 178:ハイゼンベルグ描像
  • 182:行列のトレース
  • 184:[New]ベルトランの逆説
  • 184:[New]モンティホール問題は最尤法で
  • 184:[New]二つの封筒問題
  • 184:[New]エルゴード仮説と等重率
  • 190:全射・単射・全単射
  • 192:」単射(順列)・全単射(スターリング数)
  • 500:[人気No.3]:コペンハーゲン解釈(PDF)(大学院講義ノート)
  • 501:[人気No.1]:理系の西洋哲学史(PDF); 哲学は進歩したか?(大学院講義ノート)