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64:ライプニッツ・クラーク論争;時空論 時空とは何か?

第64話
時空(時間、空間)とは何か?
ライプニッツがモナド論を持ち出せば、ライプニッツ×ニュートン論争が実現したのに;;;

ライプニッツ × クラーク論争


まず、常識人ならば、
(A):  なぜ、「時空とは、何か?」が哲学のテーマなのか?
と問うと思う。 理系だったら、
  • そんな言葉遊びをするなよ! 相対性理論を勉強しろよ。
という空気だと思う。 しかし、実在的世界観(相対性理論)だけでは、処理できない時空がある。
すなわち、
(B):言語的科学観において「時空とは何か?」である。 言い換えると、「時間」を量子言語で如何に記述するか? 「空間」を量子言語で如何に記述するか? 
である。 以下にこれを議論する。


世界記述において,「時間・空間」の概念は基本的である.歴史的には次の有名なライプニッツ=クラーク論争を思い出させる.

時空に関しての,ライプニッツとクラーク(背後にニュートンが控えている)の往復書簡(1715--1716)はライプニッツとニュートンの「時空」に関する考えを知る上にも重要である.
それにしても、
  • 相手がライプニッツならば、ニュートンが前面に出てくるべきで、ニュートンはライプニッツに対して失礼ではないか

と思うが、・・・
「ライプニッツ × クラーク論争」の要点は,次の通りである

ライプニッツ × クラーク論争


(C):ニュートンは「時空の絶対説」を提唱した.

  • ニュートンは時空を「物」の入れ物であり,実存する絶対的な存在という地位を与えた.「物」がなくなっても,入れ物,すなわち空間と時間は存在する.  したがって、
    • 時空は根源的存在である

    とした。

(D):ライプニッツは,「時空の関係説」を唱えた.
  • 空間とは,「物」の位置という性質・属性(=状態)を表現するものである。 時間とは,「物」が次々と移り変わる継起の順序である。 したがって、時空とは、単なるパラメータであって、
    • 時空は根源的存在でない

    とした



理系の普通の感覚からすると,日常的な時空は,相対性理論の時空の近似にすぎないと思うかもしれない.
したがって,
  • ニュートンの言うことの意味はわかる気がするが,ライプニッツの関係説は,「金言的定義」で,「そういう文学的な言い方」もあると納得する程度で,「だから何なの?」と問い返すに違いない.

すなわち, ライプニッツの関係説は,(真偽以前に)科学とは無縁なものと思うかもしれない.
しかし、「さすが、ライプニッツ」で、現在でも哲学者が主張しているように、
  • ライプニッツ=クラーク論争は300年来の未解決問題

は正しい。 以下に、これを解く。
ライプニッツ=クラーク論争の解決
ライプニッツ=クラーク論争は、量子言語の提案によって、次の「世界記述の分類」が形成されたことによって解決される。

{①:実在的世界記述法
②:言語的世界記述法
[物理学(ニュートンの絶対説)] 
[量子言語(ライプニッツの関係説)] 

以下の議論(①と②)は、第17(下)話「存在論(パルメニデス)」と同じである。

  • ----------------------------------------------

①:実在的記述法(ニュートンの絶対説)

ニュートンの運動方程式


  • 質量 × 加速度 = 力

したがって、ニュートン力学という実在的世界記述法の根源的キーワードは、質量、時空、 加速度、力等である。
そうだとしたら、
(E):時間・空間は存在する
である。 


----------------------------------------------
②:言語的記述法(ライプニッツの関係説):測定理論
量子言語


(F)測定理論は、二つの概念:
  • 測定と因果関係

から成り立ち、更に詳しく言うと、
  • 測定者、状態、測定対象、観測量(=測定器)、測定値、確率、順序関係、因果作用素

である。
 
時空に関しては、上の青枠   は、重要である。
結論的には、
  • 状態をパラメータと見てその特殊な場合が空間
  • 因果作用素のパラメータの特殊な場合が時間

となる。
そうだとしたら、ライプニッツの言う通りとなる(詳しくは、量子言語: ライプニッツ=クラーク論争を見よ)。 すなわち、
  (G)::時空は、パラメータである 


本ブログの目的は、下図を主張することであった。

ここで、「実在的科学観(世界が先で、言葉が後) vs. 言語的科学観(言葉が先で、世界が後)」の論争の主人公を以下の表にまとめておく:
(E)



この表の説明は、本ブログ全体を通して行うことで、今は深入りしない。 しかし、上の「ニュートン vs. ライプニッツ」でもわかるように、 実在的科学観の刷り込み下にいる現代人にとっては、
  • 言語的科学観を素直に受け入れることは意外と難しい



(H):ライプニッツの卓見には感心するが、今から思えば「ライプニッツ×クラーク論争」は論争にならなかった


ニュートンに張り合って、「時空論」を展開するとは、
  • 「さすが。 ライプニッツ」

であるが、ライプニッツは「言語(=言語的世界記述法)」の下で議論しなかったので、主張がボケてしまった。 すなわち、

(I1):  ニュートンは、「ニュートン力学」という言語体系を提案して、時空という言葉(=概念)の使い方を指定した
(I2):  ライプニッツは、 時空についてのライプニッツの気分(D)を述べたにすぎない

からである。
すなわち、ライプニッツは、世界記述の原則(第16話「ゼノンのパラドックス」参照)、つまり、
  • 世界記述法(or, 言語体系)から始めよ

を実践すべきであった。 今から思えば、
  • 「計算可能な形式を持つ哲学」を提唱できる資質を有していた哲学者は、ライプニッツだけだった

かもしれないが、 ライプニッツはこのチャンスを逃した。 天才が現れなくても、「長い時間」が解決するもので、一応の形:
世界記述法の分類

$ \begin{cases} \color{blue}{①:実在的世界記述法 ・・・物理学(ニュートン)} \\ \color{red}{②:言語的世界記述法 ・・・統計学(フィッシャー)} \end{cases} $



はフィッシャーによって得られた(第6話「科学と統計学」).


一方、ニュートンは、「実在的世界記述法(ニュートン力学)」を出発点としているので、結論(E)は明確で、
  • 「論争は、ニュートンに分がある」

という雰囲気が定着してしまって、それは現在まで続いている。

今から思えば、ライプニッツは「〇〇世界記述法」を提案できなかったわけで、日常言語内の議論であった。
  • 「ニュートン力学 × 日常言語」では論争にならなかった

と言える。

しかし、上述したように、
  • 「ニュートン力学 × 量子言語」なら論争になる。 すなわち、「(E)と(G)の両立(棲み分け)」を主張できる






-------------------------
ライプニッツにとって、「ニュートンとの論争」は最も重要な論争だったはずで、この一番重要な論争において、 自身が提案した「モナド論(という世界記述法)」を拠り所としなかったという事実は注目すべきと思う。 相手(ニュートン、クラーク)がニュートン力学(という世界記述法)を拠り所としているのに、ライプニッツは「モナドロジー」を出せなかった。 すなわち、ライプニッツは、
(B’):モナド論において、時空とは何か? 言い換えると、「時間」をモナド論(という世界記述法)で如何に記述するか? 「空間」をモナド論(という世界記述法)で如何に記述するか? 
を示すべきであったが、これができなかった。 これでは、ライプニッツ×クラーク論争は、「ライプニッツのモナドロジーに対する自信のなさ」を露にしたと評されても仕方が無いだろう。 と言うことならば、ニュートンが前面に出てくるわけがない。 





科学哲学(二元論的観念論)

量子言語(=測定理論)は、統計学と量子論を合わせた程度の強力な記述力を有する言語である。 量子言語の習得には、いろいろなアプローチの方法があっていい。 このブログでは、数物には関わらず、哲学【二元論的観念論】をメインに量子言語を紹介して、西洋哲学史の本流は常に量子言語に向かって進歩してきたことを確認する。ブログとは、一旦書いてしまうと、訂正するのが億劫になるものである。 したがって、本ブログと大幅な変更があるわけではないが、現時点での正式バージョンは【Western philosophy(PDF)】を見よ。

目次

  • 0:【Home】リンク付き目次(スマホ利用者用)
  • 1:量子力学の観測・解釈問題の解決
  • 2(上):科学哲学とは? (形而上学;統計学;量子力学)
  • 2(下):世界記述(至上)主義
  • 3(上):1+1=2:発明王エジソン;形而上学
  • 3(中):論理実証主義と形而上学
  • 3(下):ケルヴィン卿の形而上学
  • 4(上): 測定理論(=量子言語); 世界記述法の分類
  • 4(中):ソーカル事件の「脱構築」
  • 4(下)論考、知の欺瞞、量子言語
  • 5:古典力学的世界観;量子力学的世界観
  • 6:科学と統計学;量子言語;
  • 7:赤い糸 : 量子力学の観測と因果関係
  • 8:運命の量子的出会い(観測と因果律)
  • 9:コペンハーゲン解釈は虚構;因果と測定
  • 10: $[$一元論、二元論$]$×$[$実在論、観念論$]$
  • 11:離別の予感(測定と因果)
  • 12:ピタゴラス(万物は数)
  • 13:パルメニデスとヘラクレイトス;運動・変化
  • 14: 科学とは何か? 運動;因果律;確率;測定
  • 15:パルメニデスの理屈っぽさ: ゼノンのパラドックス
  • 16(上):ゼノンのパラドックスは未解決問題
  • 16(補): ハジキの公式:形而上学的命題
  • 16(中):「アキレスと亀」は未解決問題
  • 16(下): ゼノンのパラドックスの必然性
  • 17(上):存在論(パルメニデス)
  • 17(下):存在とは何か?(パルメニデス)
  • 18(上):[人気No.3]哲学は進歩したか?
  • 18:無知の知:ソクラテスの詭弁
  • 19:人間は万物の尺度:プロタゴラス×ソクラテス;倫理哲学
  • 20:イデア論:プラトンの詭弁
  • 21(上):プラトンのイデアは絶対基準・測定器のこと
  • 21(下): 西洋哲学はプラトンの脚注
  • 22(上):万学の祖アリストテレス;形相,質料
  • 22(下): プラトンとアリストテレスの融合;スコラ哲学
  • 23(上):アリストテレスの目的因
  • 23(下):三段論法を信じますか? アリストテレス
  • 23(補):必要条件と十分条件
  • 24(上):アリスタルコス(古代の地動説);アルキメデス
  • 24(下):アリスタルコス:古代の地動説
  • 25(上):ユークリッド幾何学--平行線の公準
  • 25(下):言語と数学;公理主義
  • 26:エラトステネス:古代最大の測定者
  • 27:総括〈ギリシャ vs.アレクサンドリア〉
  • 28:天動説(プトレマイオス)
  • 29:古代科学の三つの集大成
  • 30:アウグスティヌスとプラトン哲学
  • 31:アウグスティヌスと時間論;告白
  • 32:十字軍:イスラム文化(アリストテレス)の流入
  • 32.5: 位取り記数法(アラビア数字;ゼロの発見)
  • 33:神の存在証明(アンセルムス);スコラ哲学
  • 34:普遍論争と「存在・実在」;スコラ哲学
  • 36:[人気No.5]オッカムの剃刀(節約の原理)
  • 37:パラダイムシフト;コペルニクスとニュートン
  • 37(中):プラトンとアリストテレス;アテナイの学堂
  • 37(下):帰納主義;イドラ;ベーコン;経験論の祖
  • 38:天動説から地動説へ
  • 39:地動説・天動説とは、何か?
  • 40:ガリレオと地動説;ピサの斜塔;裁判
  • 41:ガリレオからニュートンへ
  • 42:プリンキピアと地動説
  • 43:因果関係とは何か?
  • 44:実在的因果関係(物理学)
  • 45:認識的因果関係(ヒューム・カント)
  • 46:数学的因果関係(ピタゴラス教団)
  • 47:言語的因果関係
  • 48:我思う、 ゆえに我在り(方法序説:デカルト)
  • 49:コギト命題からデカルト図式へ
  • 49下:物心二元論・心身二元論
  • 50:オカルト図式?
  • 52:中二病(デカルトの懐疑)
  • 53:世界記述と非ユークリッド的転回
  • 54:二元論・観念論に対する誤解
  • 56:ジョン・ロック$[$人間知性論$]$タブラ・ラーサ
  • 57:イギリス経験論の祖:ジョン・ロック;第ニ次性質
  • 58:大陸合理主義:ライプニッツ; 生得説
  • 59(上):日常言語はイギリス経験論的
  • 59(下):量子言語はカント哲学的
  • 60:唯心論:バークリー;存在するとは知覚されること
  • 61:懐疑主義:ヒューム
  • 62:実在的世界記述法と言語的世界記述法
  • 63:量子力学の道具主義化
  • 64:ライプニッツ・クラーク論争; 時空とは何か?
  • 65:コペンハーゲン解釈
  • 66:原点回帰:再びパルメニデスへ
  • 67:マクタガートのパラドックス:時間論:時制
  • 68:アウグスティヌスの時間論:主観的時間
  • 70:カント:二律背反(アンチノミー)
  • 71:「我思う、ゆえに我あり」を疑う
  • 72:カントの物自体; 模写説から構成説
  • 73:コペルニクス的転回;純粋理性批判
  • 74:純粋理性批判; アプリオリな総合判断;超越論的観念論
  • 78:カント登場の必然性
  • 78(補): 功利主義;ベンサム;最大多数の最大幸福
  • 79(上): ラプラスの魔:ゼノンのパラドックス
  • 79(下): ホーキング博士の哲学批判
  • 80:カントール:集合論
  • 80(下):空集合と選択公理
  • 81:数理論理学:数学のような、哲学のような
  • 82:弁証法という諺:ヘーゲル
  • 825: プラグマティズム(実用主義)のジレンマ
  • 83:論理哲学論考;ウィトゲンシュタイン
  • 84:言語論的転回;言語哲学
  • 86: 量子力学の解釈とは何か?
  • 88:量子言語の記述力;言語ゲーム;語りえぬもの;ウィトゲンシュタイン
  • 88.5:[人気No.1]心身問題の解決
  • 89: ボーア × アインシュタインの量子力学論争
  • 90: 二つの量子力学
  • 91: 数学の三大発見
  • 92: フォン・ノイマン;量子力学
  • 93: アリストテレス、ライプニッツ、フォン・ノイマン
  • 94: 確率の歴史
  • 95:確率の哲学: 確率とは何か?
  • 96: 確率論 vs. 量子言語
  • 97: 確率論: 二元論の消去
  • 98: 主観的時間; 科学哲学論争
  • 99: フィッシャーの最尤法
  • 100: 科学哲学の大きな物語の終焉
  • 補101:測定・推定・制御の科学哲学
  • 補102:ベイズ統計・ベイズの定理
  • 補103: 確率論と統計学
  • 150:量子力学再入門: ヒルベルト空間法
  • 152:エルミート行列のスペクトラル分解:量子力学再入門
  • 154:スピン:量子力学再入門
  • 156:ハミルトニアンの量子化:量子力学速習
  • 158:同時測定と可換条件:量子力学再入門
  • 160:ド・ブロイのパラドックス:量子力学再入門
  • 162:EPRパラドックス:量子力学再考
  • 164ベルの不等式:量子力学再考
  • 166:[人気No.4]ハイゼンベルグの不確定性原理はキャッチコピー
  • 168:EPRパラドックスの結末
  • 170:ハイゼンベルグの不確定性原理とEPRパラドックスは矛盾?
  • 174:[人気No.2]射影仮説:波束の収縮
  • 176:量子デコヒーレンス
  • 178:ハイゼンベルグ描像
  • 180:正準交換関係の不確定性関係
  • 182:行列のトレース
  • 184:ベルトランの逆説
  • 190:全射・単射・全単射
  • 192:」単射(順列)・全単射(スターリング数)
  • 500:量子言語入門(大学院講義ノート)